転校生は殺し屋さん

御霊

転校生は美少女?

「ふぅ……疲れた……」


そんな弱気なことをつぶやく俺の名前は品川京介、今年この高校に入学したピッチピチの男子高校生だ。


「お前っていつも疲れているよな、運動ぐらいしたらどうなんだ?」


疲れて机に突っ伏している俺に話しかけるのは、このクラスでも上位のイケメンである葛城紫水だ。彼のことはこれからは主人公くんと呼ぼうと思う。


そんな彼がどうして平凡な俺に話しかけてくれるのかと言うと俺と主人公くんは昔からの幼馴染だからである。家は隣同士、更に小中高でクラスは同じで毎回隣の席。そんな俺を女子たちは嫉妬していた。


「運動……?? なにそれ?」

「体を動かしたらどうなんだ? お前どうせ休日とかは家にこもってゲームやら漫画やらしてぐーたらな生活しかしてないんだろ?」

「……そうだけどさ? 学校の日は自転車なんだから休日くらいぐーたらしてもいいだろ?


主人公くんはバリバリの運動系男子である。身長は170以上と人権を持っている。その逆に俺は引きこもり系男子で身長は170以下と人権がない。ほんと、世の中ってクソだと思う。まあ、今更伸ばそうと思っても成長が止まってしまったので一生170以下の人権のない人間として生活するしかないのだ……


というか人に『〜〜したほうが良い』とか言われるのは少し腹が立つ。それをしても主人公くんみたいに運動がバリバリにできてイケメンになることができるとは限らないからだ。意見の押しつけはやめたほうが良いと俺は思う。


「でも、お前いつも自転車に乗ってるって言っても、緩やかなところしか乗らないじゃん。坂道とかは押してるじゃん」

「いいじゃんッ!! 俺だってな、お前みたいに体力があったらずっと立ちこぎしたいわッ!!」

「ずっとは立ちこぎはできないが……まあ楽だな」

「ああ……どうして神は人の能力を分けるのが下手なのだろう……」

「神なんて信じないって言ってたくせに、こういうときだけ悪者にするの良くないぞ」


全く、うるさいやつだ。というか神なんて存在居てたまるか、もし居たら説教してやる。


そんな他愛のない会話をして時間を過ごしていると突然男どもの興奮した声が聞こえてきた。


「ホントなんだって!!」

「そんな事あるわけ無いだろ? ここは田舎だぞ??」

「いーや、あれは美少女だった!! この目で俺は見た」


「どうしたんだあれ?」

「なんか美少女がどうとか言ってるな。もしかして、転校生か?」

「転校生〜? こんな田舎に??」


俺は昔からここに住んでいたが美少女らしき人は居なかった気がする。同級生? アレはただのうるさい女だわ。俺が主人公くんの腰巾着とか、モブキャラとかグチグチ言いやがって女どもが。


「そういえば、最近近所で話題になっていたな、すごい美人の人が引っ越してきたっていうの」

「俺知らなかったんだけど……」

「引きこもっているからだろ。母さんが前に夕飯の時、すごい美人が来たって言ってたわ」

「あの人に美人って言わせるってどれほどだよ……」


主人公くんのお母さんことおばさんは顔立ちが整っており、ある噂では大学のミスコンにたまたま出てそのまま1位になったとか。そしてそのこともあり、おばさんは自分の容姿について自身を持ち、今では現代版口裂け女として近所の子どもたちの初恋を奪っているそうだ。


「よーし、お前らおはよう。今日はお前らにいい知らせがあるんだ」


教室に入ってきたのはヒゲが少し生えており、きっちりとスーツを着こなしている男性でこのクラスの担任だ。そして先生は最近子どもが生まれてスマホのホーム画面にはその子の画像が設定されているということが確認されている。


「喜べ男子、転校生でしかもとびっきりのかわいい子だぞ」

「「「うおおおぉぉぉぉーーーーっっ!!!」」」


男子たちの雄叫びが教室に響く。そんな男子の姿を見て女子は冷めた目を男子に向けていた。主人公くんは少し興味があるのかソワソワしていた。当然だろう、主人公くんはあの自分の容姿に自信たっっっっぷりの母が美人といった人がどのくらいなのか気になっているのだろう。普通に俺も気になる。


先生が「入れ」というと教室の前のドアが開き、まさに大和撫子である美少女が教室に入ってきた。


「大和咲です。3年間よろしくお願いします」


そうして自己紹介をし、彼女がニッコリ笑うと男子たちは倒れてしまった。その男子たちには俺と主人公くんは入っていない。


そしてそんな主人公くんはというとあんなにソワソワしていたのに今では飽きてスマホを見ていた。彼の心の中では期待して損したという感情が湧き出ているだろう。


「大和は……葛城の後ろが空いているからそこに」

「はい、ありがとうございます」


こちらの席に向かってくる大和の姿は神々しかった。女子は何か彼女に言おうとしていたが、その気迫に押されて黙ってしまった。


「葛城さん、よろしくお願いします」

「あ、うん、よろしくね」


俺達のクラスに美少女が来たという噂はまたたく間に広がった。

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