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 よし、人も集まったしやるか。

 神宮寺三郎、時の過ぎゆくままに。これは、この前友達に借りたんだけど、相当ストーリーが良いんだよね。何回でもやりたくなる。

 友達? そりゃ、あれよ。現実の友達よ。この配信は見てないけど、私をこういう道に連れて行ったきっかけになった人。女だよ。なんか、古いゲームに詳しくて、友達も多くて、なんか、私とは違う人間だよ。あんまり話したことは無いんだけど、私は友達だって思ってる。向こうはどう思ってるのか、よく知らないけど。

 なんでこのゲームをやってるのかって? ああ、それも友達の影響。

 私ね、探偵目指してて……。いや、冗談じゃなくて、本気で。探偵になりたいんだよ。どんな事件も、解決する名探偵に。

 現実にいないことはわかってるけど、その……このゲームを貸してくれた友達が、今ちょっと困っててさ。

 まあ、ここではあんまり詳しく言えないけど、その友達が、トラブルに巻き込まれて、ひどい顔をしながら、伏せってるんだよ。で、話を聞いてあげると、「なんでも解決してくれる探偵がいれば良いのに」って言ったんだよ。

 そんなの、現実にはいないんだけど、あの子は今、そのくらい困ってる。だから、私は名探偵になって、あの子を救おうと思う。

 でも、あの子が困ってるのって今なんだよね。私はまだ探偵としての能力は低いし。今の私に出来ることって何かあるかな……。

 ああ、あるかも。部屋を見回して、思いついた。一時凌ぎだろうけど、これでなんとかしよう。犯人探しは、もう少し後になっても良い。お父さんが持ってたファミコンのゲームに感謝だ。

 前置きが長くなった。私の話なんかどうでも良いでしょ。

 まだ変なコメント書いてる奴がいるな。何? なんでそんなにその友達が大事?

 まあ、私、普段は不良っていうか、人から避けられてる人間で、ゲームとかそういう趣味も全部、捨ててたんだよね。生きるのが嫌っていうか、嫌なことしかなくて、どうせすぐ死ぬって思うと、自暴自棄になって。本当に何も無い女だったんだけど……。

 でもその子は、そんな私に何故かゲームを布教してくれた。なんで、って思ったけど、見境なく声をかけてたみたいで。ちょうど私の家に、ファミコンがあるって聞いたことはあったから、その話をしたら押し付けられた。

 家に帰って、親に聞いて、ファミコンを押入れから出してもらって、とりあえずプレイしたけど、本当に……私には刺さったよ。

 面白かった。私はこの作品に触れないまま、死んでしまおうとしていたことが、急に怖くなって。

 それから私は、ゲームを趣味にして、死ぬまでの間を、楽しさで埋めたいって思った。その友達には、感謝しても仕切れないくらいだけど、本人はきっと、さほど気にも留めて無いよ。

 これは、私が一方的に抱えてる思い出なんだから、死ぬ直前に一人で思い出して、笑いながら死ぬよ。

 良いよもう前置きは! 早くやろう。下らない語りから入る配信って私的には無いな。

 じゃあまずは、この公園のシーン。BGMをじっくりと聞いて浸った方が良いので、私は五分間何もしません……

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