第20話 魔獣処理屋の受難

 デジャヴュってやつだとカテラは直感でうすうす気付いていた。このパターンはいい例が存在しない。苦い顔でフレアを迎えると、耳に入ったのは案の定であった。


「カテラさん、セリくん、お疲れ様です。討伐終了かと思いきや、とんでもないことが分かりました。討伐依頼は最初から二つあったのです!」

「はあ?」

「管町周辺に潜伏している開拓旅団を叩け、と、ギルドからの通達です」

「そんなのチェイサーに任せればいいでしょ、私はハンターよ」

「管町に滞在している魔獣処理屋が私たちとヴェンスさんたちしかいないから、しょうがなくってやつですよ」

「はあ、厄日すぎる…ってまって。もしかしてピントスライムも旅団の仕業じゃないでしょうね!あいつらが飼ってたやつを離したんじゃあ…」

「まあ…その可能性も…無くはない、ですが…ちょっと厳しいんじゃ?」


 フレアの困惑顔を無視し飛躍的な話をしたカテラは、一人で勝手に暴走した思考を投げかける。有り得なくはない話ではあるが、あまりにも滑稽な話だ。

 フレアとセリはカテラはストレスで壊れてきたという結論に至った。

 下流に残したヴェンスマンとアーサーは既に開拓旅団の捜索に向かったという。

 カテラが一人盛り上がっている中、セリに一通りの説明を終えたフレアは、カテラを独り上流に残し、セリとともに捜索及び討伐に向かうことにした。


「大丈夫なんですか?置いてきちゃって…」

「まあ大丈夫でしょう。カテラさんもいい歳ですし、一人にしても」

「そういう意味じゃなくって…」


 フレアとセリが山道まで道を引き返すと、いつの間にかあれだけいた周りの人間がすべて消えていた。屋台にも店員すら見えない。これは、いつぞやの時と同じ現象である。異変に気付いたフレアは駆動剣を抜いている。急いでセリも剣を抜いた。


「セリくん、私から離れないでください。開拓旅団が奇術を使った可能性があります。一人はかえって危険です。大丈夫、何が起きても私が君を守りますから」

「は、はい!」

「いい子、いい返事です、っと、きましたね…」


 フレアの目線の先にギコギコと動く影が見えた。過剰な装備を付けた騎兵がこちらに向かってきていた。フレアが瞬時に動き、数体を斬り付ける。


「これは…まさか…」


 何体か斬り終えたところでフレアの動きが止まった。どこかで見た騎兵、工房製。

 これは…。


「塔外の遺跡で見た騎兵と同じ…まさかッ!」


 嫌な予感がした。考えたくない思考だ。

 中央管理室と開拓旅団が繋がっているなどとは。


「フレアさんッ!上ッ!」

「ハッ…!?」


 フレアの頭上に掛かる影。とっさに防御の態勢をとったフレアを襲ったのは、巨大な十字架だった。衝撃が体を突き抜ける。セリにも見覚えがある、戦ったこともある。

 そう、こいつは。


「ロッハーァアアア!」

「お久しぶりです、勇者くん!そして、白兎のお供さん!!」


 巨大な十字架を引き戻し、そこには白い十字架が立っていた。

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