第33話 閉幕
「ミシェル! マリク!」
エドアルドとメリッサが二人のもとへ駆けてくる。
ミシェルが言った。
「僕お父様のことも少し嫌いだったんだ」
「うっ」
本人に聞こえるよう言ったのでエドアルドは顔色を悪くしている。
「ねえ、兄さん」
そっとミシェルがマリクに耳うちする。
☆
メリッサはエドアルドと共に二人に駆けよる。
兄妹喧嘩が終わったのだ。ティナもマリクはもう大丈夫と言った。
メリッサは芝生に寝転がり笑う二人に心の底から安心する。
「僕お父様のことも少し嫌いだったんだ」
ミシェルがわざとらしく言う。
やっぱり嫌いだったのね。
「うっ」
エドアルドにも心当たりがあるようだ。
まあ、あの態度じゃあの頃のミシェルに嫌われていてもしょうがないわよね。
二人がひそひそ話をして笑った。
仲がよさそうでよかった。
のほほんとそんなことを思っていたら、エドアルドに向かって魔法が飛んできた。あっさりとエドアルドの防御魔法にはじかれる。
思わずびっくりする。なんで飛んできたの?
「お父様」
「父上」
「「覚悟!」」
ミシェルとマリクが同時に言い、エドアルドに向かって来た。スッキリとしたような、いたずらっ子のような、とてもいい笑顔で。
「このっ」
エドアルドが剣を構える。
「メリッサ、離れていろ」
巻き込まれないよう離れる。
あ、エドアルドの魔力だわ……。
彼の防御魔法を受けたのだと理解する。
「私に勝とうなどまだ早いわ!」
ミシェルとマリクの魔法をさばいて反撃をする。
三人が魔法を打ち合っていて、みんな楽しそう。
一人蚊帳の外は少し寂しいわ。
「みんなー! がんばってー!」
声を張り上げる。
「あっ、父上は母上の応援でバフがかかるぞ!」
「防御はまかせて!」
「フンッ!」
「うわああ、ほんとにバフがかかってる!」
炎が飛び、雷が光る。防御魔法とぶつかりあい、賑やかな音を立てていく。
「ミシェル、マリク、がんばってー!」
「うわ、お父様応援されないならされないで強くなってるー!」
「父上強すぎる……」
「まだまだだった……」
エドアルドに打ち負かされ、ミシェルとマリクは倒れた。
「ふふ……あはははは」
「あははは」
大暴れし、二人は満足そうな顔をしていた。
「エドアルド、お疲れ様」
タオルを渡す。彼の髪はぼさぼさになっていて息も少し上がっていた。
「ありがとう。ふふっ」
「どうしたの?」
「あの二人、強くなったと思ってな。二人とも疲れているはずなのに押されかけた」
そういうエドアルドも満足気な顔をしていて、目を細め、二人を見ていた。
「あぁ、我が子の成長はこんなにも早いのか」
「そうね……」
まだ二人は学生で、手をかける余地はあるが、そのうち手がかからなくなるだろう。そう思うとなんだか寂しい。
「メリッサ様ー! マリク様ー!」
四人で休んでいたら使用人が慌てて駆け寄ってきた。
何事だろう?
「こちらを……」
手紙を差し出される。相手はメリッサの友人の貴族だ。
何だろう? ペーパーナイフで封を切る。
「これは……!」
みんながメリッサを見る。
「マリク! マリクのショートケーキが好評だから有名店にレシピ提供しないか
ですって!」
「えっ! 僕のケーキが⁉」
「すごいじゃないか兄さん!」
「ああ。しかし当然だな。アレは美味いからな」
一斉に言われ、マリクが頬を赤くして目をパチパチさせた。
「僕のケーキがお店に…? でもあれ、母上のアイデアをもとに作っただけですよ? 母上はいいのですか?」
「もちろんよ! アイデアは私でも、レシピを作り上げたのははマリクの実力だもの」
むしろ、いつでもショートケーキを食べれるようになるなら大歓迎だ。
「……お受けします!」
「兄さんだって僕にない才能あるじゃないか」
ミシェルがいたずらっぽく言い、皆でマリクを祝った。
こうして兄弟喧嘩は幕を閉じたのだった。
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次回最終回!
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