第7話 ミシェルたちへの評価

 メリッサは自室である人を待っていた。


 部屋の扉がコンコンとノックされ、「どうぞ」と答えればミシェルが部屋に入ってくる。


「ミシェル、いらっしゃい」

 メリッサは明るくミシェルを出迎える。


「お母様、何か用ですか?」

 ミシェルは少し落ちつかない様子だ。

 こういう形でミシェルを呼ぶのは初めてである。


「今日はミシェルに渡すものがあるの」

 そう言ってメリッサは引き出しから紙を取りだす。大き目の賞状ほどの大きさで、くるくると巻かれ紐で止められていた。

 それをミシェルに手渡した。


「ミシェルへの通知表です」

「つうちひょう?」


 メリッサお手製の通知表。各先生から先日聞いた評価を紙にまとめたものだ。

 星五つでの評価と先生からのコメント、最後はメリッサからの一言で構成されている。


 ミシェルは座学が星五つか四つで、魔法と剣の授業も星四つだ。

 この通知表は長所を知らせるために作ったので低評価はないのである。

 

 習い事の項目は文句なしで星五つ。ついでに庭の手入れなどのお手伝いの項目も書いてあり、こちらも星五つである。

 評価するつもりで習い事をしているわけではないが、楽しく取り組んでいるので満点である。


 メリッサからのコメントには

『体を動かすのが苦手なのかしら? 人には得意なこと、苦手なことがあるので自分の好きなことや得意なこと、興味のあることを伸ばしましょう。上手くいかなくても大丈夫。自分のペースで焦らず進みましょうね。何か新しいことに挑戦したいときは言ってくださいね』

 と書いた。


 ミシェルが通知表を受け取り紐をほどけば、ミシェルの目が大きく開いた。だんだん顔が赤く染まって、にっこりと笑う。


「僕、だめじゃないんだ……!」

 その言葉にきゅっと胸が締めつけられる。でも笑顔を見せてくれたことが嬉しい。


「ミシェル、あなたには素晴らしい才能、能力があります。自信を持って」

「うん」


 ミシェルは通知表を大事に抱きしめて、軽快に部屋を出ていった。




「母上、何か用ですか?」

 ミシェルと入れ替わりでマリクが部屋にやって来た。


 マリクは口角を上げ、じっとこちらを真っすぐ見る。その眼差しはエドアルドとそっくりで、親子のつながりを感じる。


 マリクにも通知表を渡す。

「これは……?」


 通知表に目を通し、ばっと顔を上げた。

 キラキラとした目と笑顔がまぶしい。


「通知表です。先生から話を聞いて、コメントをまとめてみました」

 マリクの評価は魔法と剣の授業は星五つ。座学は星五つか四つ。退屈そうにしているものの内容は理解しているので文句なしで高得点だ。

 

『優秀な成績を収めていてすごいです! 座学も頑張っているようですね。これからも応援しています! でも無理はしないでくださいね。何かあったら私でも先生でも相談してくださいね」 


 というような事を書いた。優秀すぎて少し心配。


「ありがとうございます、母上! とても嬉しいです!」


 紙を持った腕を上げてぴょんぴょん跳ねて喜ぶ。


 マリクはしっかりものだけど、まだまだ子どもっぽい。


 マリクもミシェルもかわいいなぁ。


 メリッサは人を評価する側に立ったことがないので、これでいいのか不安だった。しかし、二人とも喜んでくれた。作ってよかったなぁと思うメリッサであった。

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