突然発病した統合失調症さん

高校生になってからも嫌なことはあったが、それなりに楽しい日々を送っていたと思う。


だが高校1年生のとき、なぜか隣のクラスメイトの財布を盗んだ犯人にされてしまい、登校するたびに教師に呼び出され、他の生徒との接触を禁止された。毎日「盗んだでしょ!返しなさい!」と、刑事のように教師から問い詰められる日々が続き、ついに学校に行かなくなった。


正直なところ、犯人がこの人であろうという推測はあった。しかし、私は非常に強い無駄な正義感から、口にすることはなかった。それに、その内に犯人が分かるだろうと甘く考えていた。

この正義感は、今迄の経験で培ったものであり「誰かが何かをやっていたとしても、いちいち言うものではない」と友人から言われたことが一番影響していたのだろう。だから、他人の行動について私が告げる必要はないと考えていた。


学校に行かなくなった後、携帯に担任教師から「終業式には来てほしい」というメールが届き、終業式の後に学校へ行った。その時、友人が学校で待っていてくれてて「一緒に帰ろう」と約束していた。少し教師と話した後、友人と一緒に学校を出ようとした。すると、廊下に立っていた見知らぬ二人組が目に入った。彼女らは「うざぁー、きもー、何あいつ」といった悪口を私に向けて言ってきた。普段ならその場に行って「何?なんか言った?」と詰め寄るところだったが、その時はなぜか強い恐怖感を覚えた。その恐怖感は、まるで幽霊を見たときのような異様な感覚だった。

学校を出た後、友人に「あの廊下にいた人たち、私の悪口を言っていなかった?」と尋ねたら「え?いたけど、何も言ってなかったよ?」と返された。確実に悪口は聞こえていたし、友人の答えには全く納得がいかなかったが、それ以上は何も言わなかった。


おそらく、この声は幻聴で発病した日だったのだろう。幻聴を経験したことがある人は多くないと思うが、一度聞けばその感覚がよく分かる。実際にその場にいる人の声と全く同じように響いてくる。幻聴と現実の声を見分ける事は今でも出来ない。

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