ある夏のおもいで

ざくざくたぬき

第1話 ラムネ

カランカラン

「あ~!なくなっちゃったぁ!みなも!もう1本ちょうだ〜い」

親友のゆっきーが瓶の中のビー玉をカラカラ言わせながらおかわりをせがんでいる。

「うちも商売なんだから、親友特権で1日1本までって言ってるでしょう」

私の名前は泡井水萌。 うちは小さい駄菓子屋さんで、この時期になるとキンキンに冷えたラムネを出すから、学校帰りに寄ってくる学生も多くなる。

「えーケチぃ。じゃあせめてビー玉取り出してよ」

私はゆっきーから瓶を受け取り、タオルに巻いて上からハンマーで叩く。

「やった!ありがとう」

ゆっきーは嬉しそうにビー玉を空に掲げて眺めている。

私はタオルを片付けながら聞いた。

「そんなものどうすんのよ」

するとゆっきーは自信満々に

「今年の自由研究!ビー玉はなにで磨いたらキレイになるのか!我ながら天才すぎる発想だよね〜」

「そんなしょーもないことしてんの、小学生とあんたぐらいじゃない?」

私は呆れながら言った。ゆっきーはふわふわとした印象があるせいか、余計に馬鹿っぽく見えてくる。

「あ~あっつい!今日ずっと水萌のとこいるから!」

そう言ってゆっきーは、すだれのかかったベンチに寝転んで扇風機の風に当たっている。

「迷惑だから早く帰ってよ。うちも店なんだから」

えーとゆっきーが駄々をこねる。

「まぁまぁいいじゃない。今日は泊まって行ったら?水萌もそのほうが嬉しいでしょう?」

奥からお母さんが出て余計な一言を放つ。

「もう、お母さんってば!ゆっきーをあんまり甘やかさないでよね!ほらほら!店番は私がやるから!お母さんは引っ込んでて!」

私はお母さんを奥に押し込んだ。

「ほらゆっきーも!早く帰らないと課題終わらないよ!」

そう、明日から夏休みに入るのだ。今日は半日で下校できるから、今はまだ3時前なのだ。

「ん〜…そっかぁ〜、でも暑い!アイス5本、いや7本買って帰る!」

「腹冷やすなよ、840円な」

「えっ割り引いてくれないの?」

ゆっきーが驚いている。

「当たり前だろ。それが商売ってやつだ」

「しょうがないなぁ…はい」

ゆっきーは渋々お金を出す。

「まいどありぃ」

私は思い切り笑みを浮かべ、ゆっきーを見送った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ある夏のおもいで ざくざくたぬき @gal27

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ