主人公との

 周りよりも一足先に戦い方を学び始めた玲香に続いて、他のクラスメートたちも戦いの修練を始めだしていた。

 当然、そのクラスメートたちも、玲香同様、基礎的なものからのスタートではあったが、そのポテンシャルとしては異世界人だけあって高い。

 他のクラスメートたちも急速に力をつけ始めていた。

 そんな中で、玲香とは言えば───。


「ハァァァァッ!」


 王城の修練場に、玲香の気合の込められた言葉が響き渡る。

 そんな彼女の手に握られているのは一振りの剣。

 それを今、玲香は力強く振るっていた。


「甘いっ!」


 その玲香の前に立つのはインターリだ。

 彼は素早い動きで自分の元に振るわれる玲香の攻撃を避ける。


「……っ!」


 そんなインターリを狙い、玲香は剣を振りかぶるその態勢から、剣を握っていなかった左手を差し出す。

 その左手に握られているのは魔法で作られた、小さな短刀だ。


「二の手を用意していたことは褒めるが、不意を打つなら、呼吸使いも気をつけろ。そんな前もって、大きく息を吸われたら丸わかりだ」


 しかし、その不意を打つために振るわれた短刀をインターリは楽に裏拳で弾く。

 そして、インターリは完全に態勢を崩した玲香を狙い、右手を伸ばす。

 その右手に抗うようにして玲香は無理のある態勢から魔法を発動し、インターリを遠ざけるように炎の壁を展開する。


「魔法態勢ある奴にはそんな生ぬるいのじゃ無理だっ」


 でも、その炎の壁は無意味。

 それを完全に無視し、止まることのなかったインターリは迷いなく玲香の顔面を掴む。


「ぐぁっ!?」


 そして、そのまま地面に叩きつけた。


「……ぁぁ、負けた」


 これで終わりだ。

 まだ、意識は残っているものの、玲香の全身には痺れが走っており、ここから動くことは出来ない。

 つまりは、負け。インターリから剣を心臓に憑きつけられても、玲香は何の抵抗も出来ないだろう。


「まだまだ、ね」


「いや、俺も本気でやっている。普通に誇っていい強さだぞ。最初から俺にとって有利な距離でのスタートだからな。もっと初期条件を変えれば、推移も変わるはずだ」


 その結果を受け、まだまだだと自嘲する玲香に卑下する必要はないとインターリは声をかける。

 玲香の強さ。 

 それは、ゲームの主人公であるインターリと近距離戦で渡り合えるほどにまでなっていた。

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