成長

 リトスと始めた玲香の訓練。

 それは本当に順調な形で進んでいっていた。

 本格的な戦闘訓練に入った後も玲香は完璧なまでの成長曲線を描き、近接戦闘も魔法も上手く合わせて使いこなしていた。


「……玲香は、両方使えるようになってもいいかもね。魔法剣士になっても、器用貧乏にならずちゃんとした強さになれるわ」


「確かに、どっちかと言われてもあまりピンとこないわ」


 今の玲香は近接戦闘も学び、魔法も学び、その上で、どっちに対しても抜群なまでのセンスを見せていた。

 近接戦闘に関してはリトスを超え、魔法に関しても数年前のリトスは超えている……まだ訓練開始から二週間くらいとかんあげると信じられないくらいの成長速度。

 既に玲香は世界でも上澄みと言えるような強さを持っている。


「これが勇者、なのかしらねぇ……」


 その強さ、あり方に関しては、リトスはただただ驚き、感心するばかりであった。


「……懐かしい」


 そして、そう感心すると共にリトスの脳裏によぎるのはティエラの存在だった。

 剣も、魔法も高いレベルで使いこなし、圧倒的な成長曲線を見せる……それは何処か、魔王に連れ去らわれてしまったティエラのことを想起させた。

 

「……本当に、驚いたものね」


 迷宮都市から場所を邪神との戦いの場所に移して。

 彼が急に迷宮都市から離れてそこまでの時間は経っていないというのに、久しぶりに会うティエラは想像を絶するほどに成長していた。

 自分も成長しているし、同じ仲間として行動しているインターリなんかは自国の王侯貴族の中で前代未聞と言えるくらいまで急速に強くなっているというのに、そんな私たちが大して成長していないと思わせるほどに、ティエラは強くなっていた。

 何処か、ティエラはあまり自分の成長具合にピンと来ていたような様子は見ていなかったけど。

 そんなティエラの成長速度に、そして、何でも出来るユーティリティー性……それを、今、リトスは何となく玲香に同じものを見ていた。


「さっきから、何を言っているのかしら?」


「気にしないで」


 昔を懐かしんでいたリトスは不思議そうにしている

 ティエラのことを、今、思い出していても仕方ない……そんなことをリトスは思い、彼について考えることを一旦は辞めにするのだが……。


「……ティエラみたいですわ」


「……そうですね」


 その次に、リトスが少し前に呼んでいた、四六時中ティエラのことを考えているような、シオンとレトンの二人がこの場へと現れるのだった。



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