欲求
玲香が動き出すのは実に早かった。
この世界では、当矢の息吹を感じられる。
それ以上の幸せはなく、その息吹が何処にあるのか……それを探るため、玲香は一刻も早くに動く必要があった。
「ま、まだこの世界に来たばかりなのだし、慣れるまでもうちょっと時間を置いてもいいんじゃない?」
というわけで、玲香は早速、自分の世話係になってくれているリトスへと戦い方を教えてくれてと頼んでわけではあるが、その頼まれた張本人である彼女はちょっと引いたような声を上げていた。
「貴方たちにとって、私たちが早く戦えることになるのは良いことですよね?」
「え、えぇ……まぁ、そうだけど」
「でしたら、早急に行きましょう」
ただし、玲香は強かったが。
「別に良いんだけど、大丈夫、なの?」
「何がでしょう?」
「い、いや……いきなりこんなところに来て、ホームシックになったりとか」
「なりませんね」
玲香にとって、当矢の息吹は感じるところがホーム。
この世界こそが今、玲香のホームである。
自分のホームにいるのに、何故、ホームシックになるのか?こんなことを、玲香は本気の正気で思っていた。
「い、いきなり戦わされることになることへの抵抗とかはないの?」
「特には」
リトスは知らないが、玲香は当矢の為ならば、殺人さえも厭わないようなタイプの人間である。
異世界に来たくらいで動じるようなタマではなかった。
「そ、そう……それなら、良いんだけど」
「えぇ、大丈夫です」
「それじゃあ、早速だけど、もう……戦いの為の訓練を始めちゃうわね」
「えぇ、お願いします」
結局のところ、リトスは玲香という狂人を前に折れた。
心優しく、いきなり召喚された人たちへの同情心を持っていたリトスの心は、狂人の前には必要などなかったのである。
「よしっ!それじゃあ、訓練場の方に行きましょうか。まずは基礎から教えていくわ」
「お願いします」
そして、しっかりと切り替えることにしたリトスは意気揚々と、玲香を連れて訓練場の方に向かって行くのだった。
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新作です!
自分の中の、記念すべき百作品目っ!
良ければ、ぜひ読んでくださいっ!!!
『貞操観念が逆転した男女比1:1000のエ〇ゲの悪役貴族に転生した僕はゲーム本編に関わらないつもりが、ヤンデレと化したラスボスを拾っちゃったんだけど、どうすればいいと思う?』
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