魔王のいる世界

 この場に召喚された、玲香を初めとする当矢のクラスメートたち。

 その彼女たちに説明されるのは、今の世界の現状についてだった。

 かつて、勇者の手によって封印されていた伝説上の存在であった魔王並び魔族が復活し、その力でもって世界に覇を唱えんとしている。

 そんな彼らを前に、人類は怯えるばかりであり、どうか、その力でもって我らを助けて欲しい……という説明だった。

 

「あなた方には特別な力がある」


 そして、世界についての説明の後に告げられるのはこの場に召喚された者たちが持っている力の説明である。

 元々、多くの次元並びに並行世界に渡って、数多くの世界が存在している。

 その世界の、それら多くの世界の壁を越えて渡ってきた異世界人はその魂が強化され、他とは格別された特別な才覚と力。成長能力を持つのだそう。

 

「その力でどうか、我々を助けて欲しい。そして、魔王を倒していただいた暁にはこの世界で叶えられる、ありとあらゆる願いを叶えてみせると誓わせていただきたい。そして、魔王という強大な存在を倒した時に得られるエネルギーがあれば、また世界の壁を超えられる特殊なエネルギーもまた、得られる。どうか、魔王を倒してほしい」


 魔王討伐。

 それが、当矢のクラスメートたちに与えられた役目。

 そして、それはある一面から見れば、未成年者を誘拐した凶悪組織の犯人より告げられる要求。すなわち、脅しでもある。

 彼らに、それらへと従わぬなんていう選択肢は毛頭存在しない。存在出来ない。


「ただ、こんな時にいきなりお話しても、困惑されてしまうでしょう。とりあえず、ひとまずはごゆっくり……貴方がた一人一人に同性の、サポートを行ってくれる者たちをつけている。どうか、まずはこの世界でゆっくりしてほしい」


 とはいえ、この場に当矢のクラスメートたちを呼んだ者たちはこれが脅しであるとは言わないし、彼らの中にもそう捉える者などいないわけであるが。

 未だ召喚されたばかり。

 それでも動く状況。


「私はリトス。よろしくね?」


 そんな中で、玲香の前に世話役として立つのは一人の魔法使い、リトスだった。

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