魔王の名

 僕は今、魔王と共に元いた部屋の方にまで戻ってきていた。


「さて」


 部屋に僕と魔王、それにコンフがいる中で。

 魔王はワクワクとした様子で口を開く。


「まずは私の方から名を語るべきであるな……私は劉秀。遥か古代より生きていた者だ」


「……なるほど」


 そういえば、ゲームでもほとんど、魔王のプロフィールは語られていなかったな。

 その名前が劉秀であるということは知られていたけど……魔族たちの名前って中華風になっていて、これもまた、西洋風の名前になっている人類との対比になっているんだよね。

 名前で隔絶とした文化の差を見せつけてくる。


「どれくらい前から生きているからというと、神が生きていた時代より、だ」


「……っ」


 これは、話が膨らんだか?


「私はまだ、神の候補者たちが仁義を削って戦っていた時代から生きる……そんな者なのだ」


「なるほどねぇ……」


 共に、ベッドの上へと座っている魔王の言葉に頷きながら、その意味を咀嚼していく。


「それで、残った神は唯一人、テオスだ。そして、それこそが君だ」


「お前もかよっ!?」


 そんな中で、次に僕へと告げられた魔王の言葉へと反射的にそんな声を上げる。

 ここまで散々と神様扱いされてきて、それに対して、反発してきた僕はここでも反発する。


「これまでも、神と勘違いされたことが?」


「……あるよ」


 えっ……?何、こいつは僕がマジで神だとでも言うつもりなの?普通に御免被るんだけど。


「まずは安心してくれ……君は神じゃない」


「……」


「ただ、それに近しい者と言えるな」


「……僕はただの平民だよ」


 ゲームにも出てこないモブ、それが僕だったはず……既に、とうの昔に僕は腹をくくり、自由気ままに世界を旅するモードに入っているのだ。

 今更、重要人物だったんです、なんて言われてもちょっと追いついていけない。

 それに、話もすさまじいまでに大きくなっているし……何故、ここで僕は魔王と話し合っているんだ。


「何処か、人とはズレていることを認識しているだろう?自分自身でも」


「全員が全員、同じ人は限らないでしょう?」


「自分が肉体的に死することを前提とした考え、戦い方。それが同じ、人の考えることだと?肉体的に回復するからと言え、精神的に回復できるわけじゃない。だからこそ、君の戦い方は誰もやらないし、やろうとさえ、してこなかった。それが変わることのない、ただ一つの事実なのだ。君は人として、異常。異常と言える戦い方をしているのだよ」


「……」


 それを言われると、確かにとしか言えないけどぉ。

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