手合わせ
ローアロス魔帝国の観光を楽しんでいた僕は、唐突に自分の前へと現れた項羽の手により、そのまま王城へとカムバックされていた。
「はっはっは!今の、おぬしの力を見せてもらおうではないか!」
「……クソ、何で」
そして、僕はそのまま強制的に項羽と向き合わされ、模擬戦の場に立たされることになっていた。
僕の手にも、そして、項羽の手にも木刀が握られている。
何時でも戦える準備が出来ていた。
「では、行くぞっ!」
「……ちっ」
僕は一気に自分の元にまで迫ってきた項羽の一振りを回避。
そして、そのまま続け様に振るわれ続ける項羽の一振りを回避することに精力を注いでいく。
「ずいぶんと素早く動くようになったではないかっ!」
「そりゃあ、成長期なのでっ!」
あの一戦より、僕も大きく成長している。
後、邪神との戦いの後、妙に体が軽やかに動いていた。
項羽の攻撃にも問題なく対応出来ている。
「そっちの方こそ、随分とその体のキレが良くなったんじゃないかな!?」
「これこそが本懐よっ!魔王様の復活より、我らも完全開放よ!」
……。
…………やっぱり、魔王は完全に復活してしまった後なのか。
何で、急に。まだまだインターリは最終戦を戦えるようなレベルにはない。
僕よりも遥かに火力はあるし、あの邪神にも彼の聖剣は届いただろうけど……まだ、それだけだ。
「ほれっ!何、考え事か?」
「思ったよりも強化されている自分に驚いていてねっ!」
項羽の一振りが少し、大降りになったことへと反応した僕は彼の喉仏に向かって突きを繰り出す。
「ぐふっ」
流石の項羽とて、喉仏への攻撃は効くだろう。
項羽の体が少し硬直したのを狙い、僕は次に足への斬撃。
その大樹のような足に振動を響かせる。
「ぬぅぅぅう」
「……ハァ」
最後に、下から項羽の顎を狙って木刀を差し向ける。
「負けぬッ!」
流れるような二連撃を当てても、項羽は止まらない。
態勢を立て直し、僕に向かって木刀を向けてくる……ここからだ。
僕は相手の攻撃を避け、こちらの攻撃を一方的にぶつけようという姿勢を見せ、項羽もまた同じ。
「「……ッ」」
僕と項羽がぶつかり合う───。
「何をしている?」
だが。
「「……ッ!?」」
それよりも前に、息の詰まるような悪寒を感じ、僕も、項羽も共にその動きを止める。
「二人で何をしているのだ?お前たちは、そんなにも仲が良さそうであったか?」
「……魔王」
「ま、魔王様」
何時、だろうか。
いつの間にか、自分たちの隣には魔王が立っており、僕たちは揃って動きを止めるのだった。
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