観光
街に出てもいい。
そう言われて、街に出ないわけがない。
「おぉ……」
たくさんあるビュッフェに少し、ためらいの感情を抱きながらも食事を終えた後、僕は街の方へと出てきていた。
「凄いな」
初めて見る魔族の街。
それを前にして、僕は素直な感嘆の言葉を漏らす……たとえ、ここが魔族の国の中であったとしても、旅人として世界を回ることを至高としていた僕はやっぱり、ここでも感動を抱いていた。
「魔族の国にご満悦していただいてよかったです」
そんな僕の隣にはバッチリ、少女としてのおめかしをしていたコンフが立っている……まぁ、多様性だよね。
「……そうだね」
そんなコンフの隣に立っている僕も魔族としての姿で立っている。
魔王のような立派な角に翼が生え、本当に魔族のような井出立ちだった。
「確かに、良いな」
僕は魔族の国を眺めながら頷く。
魔族たちも人間と同じ、普通の生活を送っていた。
この街には多くの露店が並んでおり、そこには多数の見たことないような商品が並んでいる。
「……楽しまないとね、せっかくなら」
ローアロス魔帝国で、行きたい場所というのも数多くあった。
ついでだし、せっかくだ。
このまま色々なところを回ってしまうのも楽しいだろう……どうせ、一人でここから脱出したり、なんてのは無理だしね。
シオンは……彼女のことを信じよう。
きっと、僕を忘れずに……いてくれている、よね?うん、大丈夫。
「よし、行こうか……コンフ。珍しいもの全部食べて見たいなっ!」
「……まだ、食べるのですか?」
「うん。全然食べられるからね」
胃の中身を文字通り焼いてないない、してしまえばいくらでも食べられる。
美味しい食事をいくらでも楽しめるわけだ。
実に素晴らしいことだと思う。
「コンフも何か食べたいものがあったら言って、いくらでも奢るから」
「お金、持っているのですか?」
「僕が寝ていた部屋からとってきた」
「えっ?」
「めちゃくちゃあったし、多分何でも買えると思うよ」
「……い、いや。そ、それ……魔王様のじゃあ……」
「別にいいでしょ。魔王だっていうなら、いくらでもお金なんて好きに使えるでしょ。別に僕がここで浪費しても何も言わないでしょ」
お金を勝手に使われて、本気でキレる魔王とかめちゃくちゃ嫌だしね。
「さっ、楽しもうか」
「あわわ」
自分の持っている財布が魔王のものだと知ってコンフが恐れ慄いているをよそに、僕は意気揚々と街を歩き始めるのだった。
というか、あのクソ趣味の悪い部屋って魔王の部屋なの?
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