食堂
自分の頭の中に広がっていく宇宙。
何を言われたのか、その一瞬では理解出来ず、困惑が広がる。
「それでは、まず、どうなさいますか?」
「えっ……?あー」
だが、すぐにそれからは立ち返り、目の前にいるコンフの言葉の方に集中する。
偵察しに行こうと思っていました、とは言えやしない。
「お食事にしますか?お風呂になさいますか?それとも私にいたしますか?」
「あー……ご飯で」
「……承知いたしました」
僕は自分が悩んでいたのを見かねて選択肢を出してきたコンフの言葉から僕は一番無難な答えを下す。
「それでは食堂の方まで案内させていただきます」
「……うん」
僕は自分の前を歩きだしたコンフの後をついて行っていく。
「ティエラ様。お食事の後はいかがなさいますか?」
「……あー僕ってさ、街の方に出ること出来るの?」
「できますよ。ただし、ティエラ様の、その外見はただの人間でございますので。その正体を隠していただくような必要がありますが」
「その、サポートはしてくれると思っていていいのかな?」
「はい。もちろんにございます。こちらから自分の見た目を偽装するための魔道具をお貸しさせていただきます。わざわざ、お力を使われる必要はないようにしております」
「本当に、手厚いんだね」
こちらが気持ち悪いと感じてしまうほど。
何で、ここまで色々なものが手厚いのだろうか。
「ティエラ様につきましては、ごゆるりと生活を楽しんでもらえれば」
「……」
お姫様待遇がちゃんとお姫様している。
本当に王族もかくやという超絶待遇だ。
「……何故、僕をここまでの境遇で扱う?」
悩んだ末、僕は率直にコンフへと疑問の声をくける。
「はて?私めでは想像できかねまする。ただ、魔王様の命令にございます。我々は魔王様にただただ付き従うのみ」
「不満はないと?」
「えぇ……いくら、魔王様の命令とはいえ、人間に仕えるという事実に私くめも少しは何か思うことがあるかと思いましたが、何故か、そんな気持ちは湧いてくることもありません」
「……そう」
人間と魔族はもっと、本能的なレベルで、もっと争っていたイメージがあったんだけどね。
結局のところ、何の情報も得られず仕舞い……まぁ、ここでうまく行くとは思っていなかったけどね。
「それでは、食堂に到着いたしました」
なんて話をしている間に、大きな扉へとつき、それがひとりでに開かれる。
その先に広がっているのは明らかに一人で食べるようなものじゃない、豪華なビュッフェだった。
「……本当に、何なんだが」
捕虜に対する食事か?これが。
僕は目の前の食堂を見て、毒の気配等も感じられないビュッフェを見て、何とも言えない声を漏らすのだった。
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