男の娘メイド
動き出し早く。
僕はベットから降り、そのまま部屋を出るための扉へと向かっていく。
「……今度は大丈夫」
眠る前はこの時に魔王が部屋に入ってきた。
だが、今回は部屋に魔王が入ってくる気配もなく、また、扉の前に立っているような人物もいなかった。
僕は何時でも魔剣グリムを引き抜けるようにしながら、扉を開け、部屋の中から出る。
部屋の外。
そこに広がっていたのはずいぶんと長い廊下だった。
「玉座の間は、ここから真っすぐか」
廊下にある窓の方に視線を向けてみれば、魔族たちの行き交う街を確認することが出来る。
本当に、自分がローアロス魔帝国にいるのだと自覚しながら、僕は廊下を歩いていく。
「……ッ!?」
そんな中で、僕は急激に近づいてくる魔族の気配を感じ、魔剣グリムを展開する。
「そこからっ!?」
それと同じタイミングで、窓がかち割られ、何処からか伸びるロープを手に持ったメイド服の少女が自分の前に転がってくる。
「何者っ!」
窓を突き破って華麗に廊下へと飛び込み、そのまま華麗に地面を転がっていたメイド服の少女へと魔剣グリムを突きつけながら、僕は口を開く。
まさか、窓から突っ込んでくるとは思っていなかった。
特に、魔法等を使わず、ロープを使って突っ込んでくるなんて……あまりにも想定外で、気づくのに少し遅れてしまった。
「まぁ、落ち着いてください。私のようなか弱い子に剣など構えないでください」
自分の前にいるメイド服の少女。
背丈は僕ほどとかなり小さく、体つきはスレンダー。水色の肩の長さで綺麗に整えられた髪に、髪色と同じ色の瞳を持ったメイド服で全身を包む少女は、剣を向けられながらも無表情で淡々とした声色で言葉を話す。
「私に敵意はありませんから」
「……それはわかるけどね?」
目の前にいる少女からは微塵も殺意等を感じない。
少し悩んだ末、一旦は戦闘態勢を解くことに決めた僕は魔剣グリムを下げる。
「ありがとうございます。それでは」
それを見て、少女は満足げに頷きながら、僕に向かってお礼の言葉を口にする。
「私は魔王様よりティエラ様の面倒を見るように仰せつかりました、男の娘メイドのコンフです。以後、お見知りおきを」
そして、そのままその少女はコンフと名乗……んっ?
「……えっ?男?今、男って言わなかった?僕の聞き間違い?」
「いえ、聞き間違いではないですよ。私は正真正銘の男です。ご確認なされますか?」
「???」
僕の頭の中には一気に宇宙が広がり、表情は猫のように変わっていくのだった。
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新作です!良ければ見てくれると嬉しいです!
『夜空に入る一つの星~残酷な階級社会である陰陽師が幅を利かせる近未来の終末世界でスラムの少年が世界を見返すらしいですよ?~』
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