二度目の目覚め
今度は見覚えのある天井だ。
「あー、まただ」
悪趣味な天井を眺める僕は思わず、悪態を漏らしながら口を開く。
本当に最悪だ。
魔王にいいようにやられ、そのまま眠らされた。
「……だが、異変はない」
しかし、僕の体は何ともなかった。
むしろ、絶好調だ。
たくさん眠ったからだろう。
「ちっ」
魔王が口にしていた心配事通りの状況になったのを確認し、舌打ちを打つ。
無理しすぎていたところはあった。不完全な回復魔法による歪み。大きな体のズレ。
それが今、完全に治っていた。
「はぁぁぁぁ」
僕は深々とため息を吐く。
魔王に、僕をどうこうするつもりはない。
今のところ、味方と言ってもいいような動きを見せていた。
「どう、しようかなぁ」
とはいえ、このままというわけにもいかないだろう。
結局のところ、邪神がどうなったのかわからないし、シオンたちが無事なのかもわからない。
シオンと早く合流したいわけだが……。
「完全に孤立しているね」
自分が閉じ込められている部屋。
その外を魔法で探知し、確認してみれば、そこに広がっているのは魔族たちの住まう国である。
自分がいるのは魔族たちの住まう国の中心に建てられた巨大な城、そこの最上階の一室。
玉座の間の後ろ側にある一つの部屋だった。
「ローアロス魔帝国」
人々の住まう大陸からは大きく離れた大きな孤島。
そこに作られた魔族の国であり、作中のストーリーラスト。主人公がラスボスである魔王と戦う地もここ、ローアロス魔帝国であった。
「……僕はお姫様か」
完全に魔王に攫われたお姫様ポジである……この場合、主人公は誰になるんだ?ちゃんとインターリが来てくれるのかな?
……それとも、シオンが、来てくれるかな?
「とりあえず、だ」
攫われたお姫様ポジであれば、ここで静かにしておくのがセオリーだと思うけど、そんなことは流石に出来ない。
別に僕は無力な王族ではなく、多くの修羅場を乗り越えた冒険者であるのだ……まぁ、向こう側に僕を殺す気があったら速攻で負けるだろうけど。
とはいえ、相手は僕を生かすつもりであり、自分が魔族の国を出歩いたからと言って、早々に殺されるようなものでもないだろう。
その程度の価値なのであれば、速攻で殺されているはずだ。
「つまり、安全に敵の根城の情報を知れるわけだ」
ここまで考えた僕は意気揚々と自分が寝かされていたベットから這い出ていく。
「……ん?」
その時、僕は今になってようやく、自分の隣に落ちていたものに気づく。
「何で……これが、ここに?」
自分の隣に落ちていたもの───前世の僕の名前が刻印された、高校卒業の記念品としてもらった一本のボールペンを見て、僕は首をかしげるのだった。
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