第七章 モブと魔王

女の子の部屋

「知らない天井だ」


 僕、毎回、こんなことを言っていない?

 ここ最近の僕はずっとこんなことを話している気がする。


「うぅん……えーっと、前は何をしていたんだっけ」


 前、気絶する前は確か……邪神と戦っていて。


「あぁ……そうだ」


 何となく、召喚魔法で空に浮かんでいた天使のような化け物を呼べるような気がして……それで、呼んでみたんだ。


「どう、なったの?」


 召喚魔法を使ってからの記憶がない。

 邪神は、結局のところ……どうなったのだろうか?僕が生きている、ということから無事に終わったのだと思いたいんだけどぉ。


「まず、ここは何処なんだよ、って話だよね。結局」


 僕は自分が寝かされていた部屋を見渡しながらぼそりとつぶやく。


「何処なの?この悪趣味な部屋」


 今、自分がいる部屋は黒を基調とした、何処か厨二チックで痛々しいような部屋だった。

 これは、あまりにもではないだろうか?

 ここまで厨二チックに寄せられると……ちょっとばかり、引いてしまうかもしれない。


「……ッ!?」


 なんてことを考えていた中、ぎぃぃという音と共に部屋へと入るための扉が開かれ、僕はそちらのほうへと慌てて視線を送る。


「起きたか?」


 扉を開けて部屋へと入ってきた人物。

 それは、かなり高い背丈に豊かなスタイルを持った美しい美貌を持った一人の女性だった。

 ただし、その彼女の持つ黒髪からは二本の禍々しい角が伸びており、その背中には黒い翼がある……魔族だ。


「……貴方は?」


 目の前にいる魔族の持つ、血のように真っ赤な瞳で見つめられている僕は警戒心と共に、魔剣グリムをいつでも取り出せるように準備しながら口を開く。


「かっかっか」


 そんな僕に対し、目の前にいる魔族の女性は大きく口を開け、実に楽しそうな様子で高笑いを浮かべる。


「あれほど、我と熱い戦いを繰り広げた中ではないか。忘れるなど、実に酷いではないか」


「?僕は、貴方と戦った記憶なんてありませんが」


 僕がここまで戦ってきた魔族の中に、また、ゲームで見た魔族の中に、目の前の女性魔族の姿はない。


「かっかっか。我は魔王ぞ?男の姿とはちと違うがな?くくく……実は、我の本来の性別は女たるぞ?あれほどの死闘を繰り広げた相手なのだ。見た目の性別が少し変わったくらいであれば、気づいてほしいのだがな?」


「はい?」

 

 魔王のような黒髪。

 魔王のような赤い瞳。

 魔王のような白い肌。

 魔王のような二本の角。

 魔王のような黒い翼。


「えっ……?はっ、へっ?」


 僕は今、目の前にある現実とさっき聞いた言葉が理解できず、困惑の声を心より漏らすのだった。



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