VS

 赤く淡く、黄金のように輝いているように見える髪を持ったティエラと、邪神が向かい合う。


『ォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ』


 先に動き出したのは邪神だった。

 邪神はその、千の手を伸ばし、一気にティエラへと振るい始める。


「ふぅー」


 だが、ティエラに近づいて邪神の腕はすべて、バラバラに弾けて消えていく。


「……」


 そして、ティエラが一歩、前に足を進める。

 その次の瞬間には、ティエラの体が邪神のすぐ背後へとあった。


『ォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ』


 それにも素早く反応する邪神がティエラへと手ではなく足を。

 後ろ回し蹴りを繰り出す……が、その足はティエラへと当たるよりも前に斬り落とされる。


「いち」


 そして、その次の瞬間には邪神の体が真っ二つに引き裂かれ、上半身が地面へと滑り落ちていく。

 だが、斬り裂かれた邪神の体の断面はすぐに蠢き始め、触手が伸びて再結合しようという動きを見せる。


「に」

 

 しかし、その触手はすべて、炎に包まれて焼失する。


「さん」


 そして、その炎の手は再結合しようとしていた断面だけではなく、一気に邪神の体全体にまで広がっていく。


『ォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!?』


 悲鳴だ。

 今、邪神の口から放たれているのは。


「よん」


 体を焼かれ、萎ませていっている邪神。

 その頭へとティエラは片足を乗せ、そのままゆっくりと彼はその手に握っている魔剣グリムを持ち上げる。


「ご」


 そして、そのまま邪神の頭へとその剣を振り下ろす───何時からだろうか?魔剣らしく、禍々しい異様な見た目をしていたその剣が神々しく光り輝く、清純なる剣へと変わっていたのは。


『ォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオォォォ───』


 剣に頭を貫かれた邪神は、その体を光の粒子へと変え、そのまま、天へと消えていく。


「神殺し」


 圧倒。

 ティエラは今、決して人間風情では敵わないはずの、絶対上位者。神の候補者たちが一柱を軽く一ひねりしてみせた。

 そして、そこには一切の苦戦などなかった。

 まさに、圧倒的であった。


「……嘘」


「嘘、でしょう……?」


 邪神が、神の一柱が、死んだ。

 その事実を前に、エルピスも、インターリも、そして、この場にいる誰もが驚愕の表情を浮かべて固まる。信じられない事情を前に。


「あぁ……カッコいい、ティエラ」


「あぁ……流石、神様」


 ただ、その中で、シオンとレトンだけは邪神なぞ目もくれず、ただただティエラのみを眺めているのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る