召喚魔法
鐘が鳴り響く。
そんな中で。
『ォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオ』
邪神は咆哮を一つ。
圧倒的な魔力がこの場に吹き荒れ、多くの者たちに恐怖を与える。
千手が、邪神の肉体より、ゆっくりと動き始める。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああ!?」
「こ、これは……」
「おぉ……神よ」
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
「まだだ……まだ、僕は負けていないっ!戦ってもいないっ!」
それを前にして、逃げ出す者。絶望する者。神に祈る者。壊れたように笑う者。剣を握り、抗おうとする者……実に、様々な反応をこの場にいる人たちは見せていた。
「……」
そんな中で。
僕はただただ、こちらのことを見つめている天使のような怪物のほうをジッと眺めていた。
「ティエラっ!ティエラっ!ティエラっ!」
地面に寝そべり、ただ眺めるばかりの僕へとシオンが駆け寄ってくる。
「……回復、回復魔法を僕にかけてくれないかな?」
そんな、シオンの方に視線を向ける僕は
「か、回復魔法!?な、何でそれを私に!?回復魔法ならじぶ───ッ!?」
既に僕は自分にかけ続けている回復魔法を解いている。
僕の体は今、急速に死へと向かっていっていた。
全身から血が流れ、心臓は止まり、目からは真っ赤な涙が流れる。
僕はまだ、脳を活用した無茶を辞めていなかった。
「な、なんでっ!?なんで、死のうとするのっ!?魔法を……っ!魔法をっ!」
そんな僕を前にして、シオンがボロボロと涙を流しながら、自分へと回復魔法をかけ続けてくれる。
それにより、何時死んでもおかしくなかった僕の体は一時的に死へと向かう道のりの途中で足踏みを始める。
「回復魔法をかけてっ!」
自分が死にそうになる中でも、回復魔法を発動させない自殺行為。
「ごぶっ……やり、たいことがあって」
だけど、それをしてまででも僕にはやりたいことがあったのだ。
「……ぁあ」
僕は手を伸ばす。
遥か上空にいる天使のような怪物へと。
「召喚、魔法」
そして、ここに来て、僕が発動させるのは召喚魔法だった。
僕は呼んだのだ。
理論的には、何でも呼ぶことの出来る召喚魔法を発動させて。
───えぇ、もちろんです。我が……。
鐘は、音楽へと変わる。
「……っ!?」
讃美歌が、この世界に流れ始めた。
光はどこまでも世界を包み込む───上空に漂っていた天使はその場から消滅し、代わりに光となって僕の方へと差し込んできていた。
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