険悪

 エルピスさんがレトンたちを救援すると自分たちに話してから早いことでもう五日。

 

「お久しぶりですね、ティエラ様」


「う、うん、久しぶり」


 その五日後、ここ、アルカティアへと、とうとうレトンたちが到着してきていた。

 レトンはしっかりとインターリ、ジャーダ、リトスの三人。ゲームにおける主人公たちと共にアルカティアへとやってきている。

 彼らの到着は戦力的に、かなりの補充になってくれると思う。

 ただし。


「えぇ、お久しぶりですわ」


「……えぇ、シオン様の方もお久しぶりです」


 自分の前にいるレトンから僕を庇うように前へと踏み出していくシオンと、レトンの二人は何処か、険悪な雰囲気を醸し出している真っ最中だった。

 これから、協力して何か、事に当たっていくようになるとは思えない険悪さだった。


「……」


「……」


「……」


 そんな二人を前にして、レトンの後ろにいるインターリたち三人もかなり気まずそうな表情を浮かべていた。


「ずいぶんと、シオン様は前に出てきておられるのですね?前はもうちょっと、他人との会話をティエラ様に任せていると思ったのですが……」


「私はティエラが第一ですわ。誰かと会話し、自分たちがどう動いていくか……それを決めるのはティエラですの。今、この時が例外なんですわ」


「何故、例外にする必要が……?」


「わざわざ言わせないでほしいですわ。貴方に対して、ティエラが恐怖を抱いているからですわ」


「そんなこと、ありえないですわ」


「だったら何故、迷宮都市から逃げるようにしてあの場を去ったんですの?」


「ティエラ様は元々、世界を飛び回っている御人でしょう?」


「私が実際に、レトンが怖いから助けて欲しい、と相談されたのよ」


「ずいぶんと妄想が激しいようで……」


「それはこちらのセリフですわ」


 バッチバチ……バチバチだよぉ。

 それで、話の中心が僕だよぉ。

 仲間として僕を守ろうとしてくれているシオンと、自分のことを神様だと今も勘違いしてしまったままの女友達であるレトンが睨みあっている……うぅ、この状況。非常に僕の胃に優しくない。


「あ、あの……」


「ティエラは静かにしているんですわ」


「はい……」


「随分と高圧的なんですね?シオン様は。そんな態度では、ティエラ様から嫌われてしまいますよ?」


「そんなこと、ありえないですわ。私とティエラは魂で繋がっていますの」


「ふふふ……そこまで、ティエラ様がシオンに執着している、と?」


「……これはティエラをお前のような不埒ものから守るための行為ですわ。嫌われるはずがないですの」


「それは、こちらのセリフでもありますよ?」


「……」


 シオンとレトン。

 その二人が睨み合い、険悪な雰囲気を醸し出している中で、僕はその間であわあわしている事しか出来ないのだった。

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