念押し
手首にひんやりとした感覚を覚える僕は。
「わわっ!?」
そのまま、後ろから引っ張られてベッドの方に転がされていく。
「……あの年増の匂いがっ」
無様に転がった僕の体へと馬乗りになるのはシオンだった。
「ど、どうしたの……?シオン」
そんなシオンへと僕は視線を送りながら、疑問の声を上げる。
「私は、心配しているんですの」
「し、心配……?」
「そうですの。ティエラはいざという時には冷静沈着で状況判断能力に優れている……正直に言って、そのレベル度合いで言うのであれば、私はこれまで会ってきた人たちのトップレベルだと思いますわ」
「あ、ありがとう……?」
「ただ、特に危険が迫っているわけでもないときのティエラは人間じゃないですわ」
「そ、そこまで……?」
「そこまでですの。ティエラは危険を探知する能力が壊滅的であるために、余程の状況にならないと危険だと判断して動き出さないですわ。そこが致命的ですの。良いですの?あの年増……エルピスはイミタシオン教の高官。数多の修羅場を潜ってきた怪物ですわ」
「そ、そんな警戒する必要はあるのかな……?」
「そうなっているのが危機感の欠如ですの。エルピスが如何な人物か、知っているんですの?」
「……いや、それは」
確かに、それを言われてしまうとちょっと弱い。
別に僕はエルピスさんのことが詳しかったりしない。
「私だけですの。ティエラを思い、ティエラを一番に思い、ティエラの為に尽くすのは。ティエラは私が幸せにしますわ。ティエラは私と一緒にいるのが一番幸せですわ」
「えっ、いや、その……」
な、何……?これは、僕がプロポーズされているの?
「ティエラは私にとって大事な仲間ですわ。自分の仲間が他人に食いつぶされて、何も思わないわけがないですわ」
「……」
違ったみたいです。
仲間である僕が他人から食いつぶされたら、パーティーとしてシオンの方も被害被るから気をつけろや、ボケェってことですね……はい。
気を付けます。非リアが調子に乗るのが一番、女性が嫌うことだよね。
「それにティエラ……レトンが来ることを簡単に受け入れましたの」
「う、うん……なんで?何か、駄目だった?」
「駄目ですの。何で、この街に来たのかわかっていないんですの?」
「い、いや……それでも、別れてから結構な時も流れているし、レトンの方もある程度は落ち着いたんじゃないかな?」
「甘いですわ。無理ですの」
「だとしても、僕を神扱いするのは流石に控えるんじゃないかな?だって、イミタシオン教の高官たちも多くいる場所でしょ?」
「だとしても、ですわ。決して油断はできませんの。ティエラ。良いですの?」
「う、うん……」
「レトンとも、エルピスとも、これからは基本的に私が対応しますわ。私が守りますわ。ですから、私だけを頼るんですの」
「わ、わかったよ……そんな過保護になってくれる必要はないと思うけどぉ、それでも、これまでの僕の所業も、所業だし」
ちょっと自分が強い言葉で否定するにはこれまでの行いのレベルが低かったと思う。
結構、散々であるからね……シオンの前で詐欺にかかりそうになって、それを防いでもらったことだって、一度や二度じゃないし。
「わかったのなら、良いですわ……今だけ、今だけですの。私が、安心できるようなときになれば、もういいですわ」
「うん、わかったよ」
僕はシオンの言葉へと素直に頷く。
「それじゃあ、もういいですの」
それを確認したシオンは僕の手首にかけられた手錠を外してくれる。
「それじゃあ、夕食を食べに行きますわ。あの子供たちが作ってくれていますの」
「うん、そうだね」
僕はシオンの言葉に頷き、解放された手を使ってベッドから這い出る。
「……というか、シオンは孤児院の方にずっといたんじゃないの?」
そんな中で、僕はシオンへと結構気になっていたことを聞いてみる。
「ん?私はシオンのことならすべて知っていますわ」
「えっ、何それ……」
それで返ってきた答え。
かなり怖めの答え僕は恐れ慄きながら、大広間の方へと戻るのだった。
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