あの後
自分のすぐ真後ろに立っているシオン。
「い、いたのなら……言ってよ」
そんな彼女へと僕は困惑の感情を漏らしながらも、声をかける。
「……楽しそうに話しているようでしたので、声がかけにくかったんですわ」
「別に、どんな時でもシオンに話しかけられて、迷惑だと思うようなタイミングなんてないよ?」
「……っ」
「それでさ、あの後、どうなったの?あの時に、現れた触手は」
「あー、そうですわね。まずは、そのことについて話すべきでしたの」
「うん」
「ティエラが心配するようなことは何も起こらなかったですわ。まず、そこは安心して良いですわ」
「それなら、良かった」
護衛失敗です!なんていうことになれば、間違いなく大変なことになっていただろうから。
「あの後、無事に触手の対処は出来ましたわ。ティエラが急に気絶して、騒然とはなりましたが、それでも、私がしっかりと介抱しましたわ」
「ありがとう」
「仲間として当然のことですの。それで、その後は怪我人の確認と治療行為。それらに当たりましたわ。神官たちの集まりなだけあり、回復魔法が使える者たちが多かったおかげですぐに終わりましたわ。それで、その後、緊急事態の報告を受けていたコリンイで待機していた人たちが替えの馬車と共が私たちの元に到着。その馬車を使ってアルカティアに着きましたの」
「無事に着いたようなら良かったよ」
「それで、何ですの」
「ん?何か、問題があるの?」
「あの、触手が一体何なのか、ですわ」
「あー」
確かに、あの触手が一体何者なのかわからないままじゃダメか……あの、僕が気絶する直前に見た怪物。それと、寝ているときに聞こえていた判然としない声。
個人的に気になることもある。
「とはいえ、あれが何なのかはイミタシオン教の方は知っているようですわ」
「えっ!?そうなの!?」
「らしいですわ。まだ、私も説明はティエラが起きてからということで聞けていませんが。ティエラが起きたというのなら、イミタシオン教の教会の方に行きますわ。あれが何なのかの説明を受けなきゃいけないですわ」
「まだ、エルピスさんたちはアルカティアに滞在しているのか……」
「そうですわね」
「……なるほど」
結局のところ、まだ全然シャリテ教の方も完全に解決したわけじゃないのに。
話はどんどんと大変な感じになっていないかな?大丈夫?アルカティアに、関係あるのだろうか……あの触手は。
「おにぃ」
そんなことを考え始めた僕を、後ろから声がかけられる。
「……シャリテ教を見捨てて、イミタシオン教のところに行くの?」
声がして、後ろを振り返れば、そこには不安そうな表情で僕の方に視線を送っているレビスタの姿があった。
いや、レビスタだけじゃない……他の子どもたちも不安そうにしていた。
「ふふっ」
あぁ、そっか。
僕たちが何処に行っていたのか、話していないのだから、イミタシオン教の名前が自分たちの口から出てきている状況はちょっと不安になっちゃうよね。
「大丈夫だよ、レビスタ。また、待っててよ。ちゃんと帰ってくるから」
不安そうな子供たちを、放置することなんて出来ないよね。
「行こうか、シオン。夕食前にまで帰ってこよ」
「わかりましたわ」
「……っ!いってらっしゃい!ご飯は私たちが作っておくわ!」
「いってらっしゃいませ。食事の件はご心配なく。私も出来ますので」
「うん、ありがとっ」
僕はレビスタたちへと手を振った後、シオンと共に孤児院を後にする。
夕食を作ってもらっているから、早く帰ってこないとね。
「……あまり、感情移入しないようにしてくださいね?」
「んー、最悪の時は全員でアルカティアを後にしようよ。ちょうど、あの子たち全員が生活できそうな家も別の街に持っているよ」
故郷と、宗教。
どちらを捨てるのか、それはレビスタたちに聞いてからだと思うけど。
「ところでさ」
「ん?なんですの?」
「あの、触手の下にいた。触手と共に光へと吸い込まれていったあの一つ目の巨大な化け物は何だったんだろうね?僕はちょっと、あれと戦えるような勇気は出ないんだけど」
「……?何の話をしていますの?触手の下から、あのエルピスの使った封印により、光に吸い込まれていったのは触手だけだったですわよ?」
「えっ?」
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