マーラ
レビスタの隣に立つ少女。
「初めまして」
そんなレビスタとよく似た腰にまで伸びる髪を持つ少女は一歩、前に踏み出し、そのまま深々と僕の方に一礼する。
「私はマーラ。レビスタの姉です」
「これは丁寧にどうも。僕は流浪の冒険者であるティエラだよ。よろしくね」
少女、マーラの自己紹介を受ける僕は笑顔で自分の自己紹介を返す。
「……っ、はい、よろしくお願いします」
「無事に孤児院の方へと戻れたようでよかったよ」
「……はい、これも、ティエラ様とシオン様の尽力のおかげです。本当にありがとうございます」
マーラは深々と僕の前で頭を下げる。
「いやいや、そんな深々と頭を下げる必要はないよ。むしろ、あの後すぐに別の用事で席を外しちゃってごめんね。最後まで面倒見られなかったから。笑顔でお礼を言ってくれるだけでいいよ?」
そんな彼女を前にする僕はすぐに頭を上げるように声をかける。
「いえいえ、助けていただいた上に、しかも、その後の面倒までお願いするなんて出来ませんから。お気になさらないでください」
「いや、マーラはまだ未成年でしょ?ちゃんと、周りの大人を頼るのも大事だよ」
「……私は今年に十四歳となりますし、年齢としてはティエラ様と同じくらいだと思いますが」
「……」
僕はそろそろ誕生日が近い十二歳。
バリバリの未成年である。
成人年齢が十八歳よりも低い十五歳であるこの世界であっても、僕は全然未成年である……マーラの一つ下だね。
「ほら、僕はお仕事しているから。世界中を飛び回って、冒険者として活動しているから。実質的に成人済みだよ」
精神年齢も込みで考えると、既に中年の域に行っていると思う……なんか、肉体に精神年齢が引っ張られているような感覚もあるけど。
赤ん坊の時とか、前世の記憶もしっかりとありながら、それでも毎日泣いて、トイレもその場でする赤ん坊としての自分に違和感を覚えてはいなかったしね。
「ずいぶんと無茶苦茶な論理のように気がしますが……」
「冒険者っていうのは自由なんだよ。それだけど、シオンは何処にいるか知っている?」
「シオン様ですか?」
「うん、そう。シオンに聞きたいことがあるんだけど」
気絶してからの記憶がない。
何時の間に、僕はアルカティアの方に戻ってきていたというのか。
エルピスさんをアルカティアにまで護衛する依頼は最終的にどうなったのだろうか……?馬車は粉みじんになっていたけど、どうやってあの大所帯でここにまで来たんだろう?
僕はまるで今の状況を知れていなかった。
「そう、ですね……シオン様が今、どうしているかはちょっとわからないですね。先ほど、」
「うわぁー、マジかぁ」
どうやって、自分の現状をこれから知ろう。
とりあえず、冒険者ギルドの方に行ってみるかな?
「んー、うん。マーラとレビスタ」
「はい」
「何?」
「僕はちょっとシオンを探すついでに冒険者ギルドの方に行ってくるから、留守番お願いね」
「承知いたしました」
「任せてよ。というか、この孤児院は私たちの家で、ティエラがお客さんでしょ?」
「まぁ、そうだねっ!それじゃあ、行ってくる」
レビスタの言葉に笑みを返した後、僕がこの孤児院の方を後にしようと足を一歩、踏み出したその瞬間。
「何ですの?」
自分の真後ろから一つの声がかけられる。
「ずいぶんと楽しそうに話していた様子でしたが」
一体いつからいたのか。
「うわぁっ!?」
「「……ッ!?」」
いつの間にか自分のすぐ後ろに立っていたシオンを前に、僕は大きく悲鳴を上げるのだった。
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