手
とうとう洞窟の入り口だけではなく、地上に穴を開けて続々とゴブリンが現れ出して来た中で。
「……」
僕はあまりにも絶望的な状況を前に体を膠着させる。
どの面を見ても、この現状を切り返せるような札はないように思えた。
「鳴り響きないッ!!!」
それでも、絶望している僕の隣でシオンは魔法を発動させる。
シオンの杖より魔力が膨れ上がったあと、この場にいる地上へて出てこようとするゴブリンたちへと雷が落ちていく。
「クソが……ッ!」
シオンが諦めていないのに、僕だけが諦めてどうするのか。
僕は下げていた剣を再度握って持ち上げ、周りの状況を再確認する。
まず、全員に対応するのはいくら何でも無理だ。
数が多すぎる。
今、僕がやるべきなのは他の人では対処できない者たちを倒すこと。
ただのゴブリンなら、少し剣を握ったことのある者なら勝つことが出来る。
「ハァァァッ!」
自分が狙うは。
「ぎゃぁぎゃぁぎゃぁッ!!!」
ゴブリンたちの中でも、強力な種類であるゴブリンロードなのである。
僕は強い力を感じるゴブリン順に攻撃を仕掛けていく。
少しのゴブリンが森の中から抜けていくのは仕方ない。
「僕を見ろ」
ゴブリンたちが出来るだけ散らばらないよう、相手の注目を浴びる魔法を展開しながら剣を振るい、魔法を発動させていく。
この場にいるのは僕だけじゃない。
シオンもいる。
まだ……まだ。
「……ッ」
僕は剣を振り、魔法を発動し、無限に湧き出てくるゴブリンたちへと攻撃を続けていく。
「きつ……」
数が、数が、多すぎる。
それに、このままだと……ッ。
「きゃあああああああああああああああっ!?」
僕が最悪の想像をし始めた頃、自分の耳にシオンの悲鳴が聞こえてくる。
「シオンっ!?」
僕がシオンの方に視線を向けると、彼女は今、自身の足元から急に現れて豪腕を振るゴブリンロードを前に姿勢を大きく崩されているところだった。
「……ッ!?」
僕はたった今、ゴブリンロードの腕の一振を受けようとしていたシオンの体を突き飛ばして、己が代わりに立つ。
「ガァァァァァァァアアアアアアァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
ゴブリンロードの腕の一振は僕の頭を簡単に吹き飛ばし、自分はただ首から下だけが残る。
「ぎゃぁぎゃぁぎゃぁ」
「ぎゃぁぎゃぁぎゃぁ」
「ぎゃぁぎゃぁぎゃぁ」
そして、そのまま僕はゴブリンたちの猛攻を受け、その体を次々と血に染め、辺りに肉をぶちまける。
「僕の命を賭して燃えろ」
だが、それでなお、僕は問題ない。
自分の血を媒体として魔法を発動。焔を起こし、一気に自分の周りのゴブリンを燃やし尽くす。
「このまま全部燃やし尽くしてしまえ」
そして、そのままの勢いで炎の手の威力を底上げしていく。
僕や、シオンの使う魔法の威力を覆い隠すような魔法を使っていたマジックゴブリンをも無視して、炎の手を広げ、森そのものを燃やすかの勢いで広げていく。
自然環境なんて、もう、いいや。
どうせ、ここでゴブリンを自由にすれば最悪の事態になるだけ……ただ。
「「……ッ!?」」
僕がさっきも浮かべだ最悪の事態を頭に浮かべたその瞬間。
この場全体が震え始める。
地面が揺れ、そのまま……。
「……やっぱり!?」
次に、起こるのはこの場そのものの沈下だ。
自分とシオンが立っていた地面が大きく陥没し、そのまま地下の方へと落ちていく。
「ぎゃぁぎゃぁぎゃぁ」
「ぎゃぁぎゃぁぎゃぁ」
「ぎゃぁぎゃぁぎゃぁ」
そして、そんな自分たちを待っているのは、当然大量のゴブリンたちである。
「こ、これはどうしますの!?」
「……ッ」
慌てて僕が飛行の魔法を使用しようとしたその瞬間。
『───』
「はっ……?」
自分の頭の中に、ぼんやりとした何かの声が聞こえてきて己の体を条件反射的に止める。
そして、次に瞬きをした時間の間に。
「なに、これ」
崩れゆく地面から謎の光り輝く腕が伸び、自分たちを待っていたゴブリンたちをことごとくたたきつぶして行く。
圧倒的な力と質量でゴブリンたちを引き潰していく光り輝く腕の数はどんどんと増え続けていき、数えるなんて到底無理な量のゴブリンを全てたたきつぶしいく。
「何が?」
「……なんですの、これは」
その光景を前に僕とシオンが困惑の感情を浮かべている中で。
「大丈夫でしたか?お二方」
一人の男性の声が響いてくると共に、空の方から一人の男性が降りてくるのだった。
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