当主
シャリテ教のことを本当に警戒しているのか、何なのかは分からないが、僕が門番へと話をつけた後、直ぐに当主へと会うことが出来た。
「やぁ、初めて会うね」
自分の前に座る男。
それがこの街を統べる領主。
リベロオール男爵家の当主たるロルオ・リベロオールである。
「えぇ、お初お目にかかります」
そんな彼を前に、僕は深々と一礼してみせる。
「えぇ」
綺麗に整えられた白髪と髭を生え揃わせている好々爺然としたリベロオール男爵閣下は、自分の態度に大して、満足げにうなづいてみせる。
「リベロオール男爵閣下ともなれば、仕事の数も相当に多いと見受けられます。ですので、単刀直入に申しあげさせてもらいます」
そんな中で、僕はさっさと一人で話を進めていく。
そんな僕が取りだしたのは金貨五十枚を積めた袋である。
「ここに金貨五十枚あります。これで、フェリテ教が運営する孤児院の用途不明の借金はチャラということでいいですか?」
「我々が貸し出したのはシャリテ教に対してであり、貴方に対してではないよ?」
そんな僕の言葉に対し、リベロオール男爵閣下はわかりやすく作られた困ったような笑顔とともに口を開く。
「いやいや、まだ幼い少女にリベロオール男爵閣下と交渉することは酷だからこそ、王族や聖女など、多くの人との交流のある自分が代わりに立たせてもらっているだけです」
「……」
「自分はただ、金貨五十枚で孤児院に泊まっただけの人にございます。ここにはゆっくりと長居出来る宿屋がありませんでしたので」
この街は結構ガチめに宿屋はない。
孤児院がなければ早々に街を退散する羽目になっていたと思う。
「金貨五十枚ならば、ただの浪費としてそこまで気にするような値段でもないですよ」
「ふふふ……流石は凄腕の冒険者と言ったところでしょうか。街を悩ませている問題の数々を解決してくれたと聞いているよ。遅くはなってしまったが、ここで感謝を申し上げる」
「いえいえ、冒険者として当然のことをしたまでですから。これも、ここまで自分たちを受け入れてくれた孤児院のおかげでですよ」
「……」
僕の言葉に大して、リベロオール男爵閣下の方は沈黙を見せ、次に告げる言葉を悩み始める。
「少し、いいだろうか?」
その次に、リベロオール男爵閣下の方は苦笑混じりに言葉を漏らす。
「あなた方二人だけと話したい。そちらの子を退出させてもらうことは可能だろうか?」
「な、なんでよ!?」
いきなり話を振られたレジスタは困惑の声とともに立ち上がる。
「聖女様について、少し……本当に面識はあるのだろうか?」
「うーん」
これは、一旦レジスタに退いてもらった方がスムーズかな?
「レジスタ、ちょっと出て言ってもらえる?」
「えっ?」
「あとは任せて。何があろうと僕は君の味方だから」
「……ッ!?……う、うん、分かったわ。じゃあ、信じるわ」
そんな考えより告げる僕の言葉にレジスタはうなづいてくれるのだった。
「……ちっ」
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