金貨五十枚

 自分たちが新しくやってきた街に来てから早いことでもう一週間。

 この間、ほぼほぼ休みなくフル稼働した結果。


「何と……」


「おぉ……私、こんなたくさんのお金、見たことがないよっ」


 たった一週間で金貨五十枚を稼ぐことが出来ていた。


「いやぁー、思っていたよりも高めの依頼が残っていたおかげで、かなり楽できたよ」


「そうですわね」


 高難易度の依頼ばかり残っていた中で、かなりの金額を稼ぐことが出来ていた。


「ほ、本当にこれだけのお金を私たちに、くれていいの?」


 そんな僕たちを前に、いざ!金貨五十枚という大金を貰えるという状況を前にして、レビスタはあたふたして困惑し始める。


「宿代だよ、宿代」


「ど、どんな宿でもこんなに高くはならないよ……!」


「まぁ、でも、所詮は一週間で稼げた範囲でしかないからね。そこまで気にしなくていいよ」


「いやいや!?それでそっかー、とはならないよっ!」


「まぁ、でも、このお金は一生懸命頑張って、レビスタの為に稼いできたわけだからね」


「……そうですわよ。えぇ。私たちがレビスタの為に稼いできたお金ですの」


「お姉さんのこともあるんでしょう?大人しくもらって。自分の家族の命がかかっているときに些末なことを気にしている余裕はないでしょう?」


「う、うん……そうだね」


 僕の言葉にレビスタは頷き。


「おねぇを救うのがまず第一!ありがたく、使わせてもらうね」


 そして、姉の為にという思いを覗かせる。


「うん、そうしな」

 

 まぁ、問題は金貨五十枚を渡しました。はい、これで解決です!とは、ならないことだと思うけどね。

 それでも、僕とシオンはあえて、毎日のように強力な魔物を複数体抱えた状態で街を歩いて、冒険者ギルドの方に向かっていた。

 その圧力込みで、自分たち二人も一緒についていけば、ある程度交渉が楽にはなってくれると思いたいんだけど。


「……本当に、よろしいので?」


 そんなことを思っている中、これまで沈黙を保ち続けていたアルメリアが口を開く。


「私は既に老体。今を生きる子たちの決断に意を唱えるなどという無粋なまでをするつもりはない……じゃが、本当に良いのか?それで、後悔はないのかえ?」


 そして、アルメリアは真っすぐに僕の方へと視線を向けながら言葉を伝える。


「もちろん。どれだけ、甘いと言われようとも、これが僕だから」


 変えなければならないことも多いとは思う。

 それでも、誰かの為に動ける、というのはたとえ、どんな世界であったとしても変えたくはない。


「ありがとう……感謝する」


 そんな僕の言葉を受け、アルメリアは深々と頭を下げる。


「いやいや、大丈夫ですよ。それじゃあ、えっと、まずは領主の方にお伺い立てるでいいの?どこに連絡するの?」


 領主に対して借金をしたときは、どういう行動を取ればいいのだろうか?


「えーっと、普通に領主様の方にお伺いを立てればそれで大丈夫だと思うわ」


「なるほどね。それじゃあ、もう早速、今から領主の方に行こうか」


「えっ!?今から!?」


「うん、今から」


 出来るだけ早く、領主の方にお伺いをたててしまいたい。

 向こうが突然現れた凄腕の冒険者を前に、困惑している間に色々なものを押し切ってしまいたい。


「さぁっ!行こうか、レビスタっ!囚われの身となっている君のお姉ちゃんを救うために!早く解放してあげた方がいいでしょっ!」


 そんな思惑より、僕は早く領主の元に行こうとレビスタをまくし立てるのだった。

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