久しぶりの
ほぼほぼ毎日やってくるレトンに、かなりの頻度でやってくるのインターリたち四人。
そんな中で常に騒がしく、どんちゃん騒ぎとなっている我が家は今。
「んっ、久しぶりに二人きりかな?」
「そ、そうですわね」
久しぶりに僕とシオンの二人きりで静かな時間を過ごしていた。
「おいしっ」
そんな日に僕は、ソファの方に腰掛け、ポップコーンを食べながら魔導書を読んでいた。
今日はシオンが持っている杖のメンテナンスの日であり、ダンジョンに潜れるような状態にはないので、こんなにもまったりとしているのだ。
魔法使いの杖には魔力の威力を増大させる、魔力の結晶。主に魔物の内部から採取できる魔石などが、杖についているからね。その魔石は消耗品。定期的にメンテナンスをする必要があり、時折、こうしてダンジョンに潜れない日が出来てしまうのだ。
ちなみに、この魔石は本当に便利で、内部に魔法をストックしておくことも出来る。
洗濯機の代わりに魔石。冷蔵庫の代わりに魔石。給湯器の代わりに魔石。そんな世界だ。
「……そのポップコーン、美味しいんですか?」
「ん?うん、美味しいよ、食べる?」
僕は自分の膝の上に抱えていたポップコーンの入った箱をシオンの方に向ける。
「ありがとうですわ」
シオンは少しだけ悩んだ後、一つのポップコーンを口に含む。
「美味しいですわ」
「それならよかった」
このポップコーンを作るのって地味に大変だからね。
前世のを完全再現した奴だから。この世界に本当はないポップコーンを僕が頑張って生み出したのだ。
まぁ、種を初めて乾燥させただけの人だけど。
「初めて食べますけど……本当に美味しくて驚きましたわ」
「割と僕が作るものって全部そうでしょ?」
「確かにそうですわね……本当にすごいですわ。良く、色々な料理を一から作れますわよね」
「ははは」
前世の料理をここで再現しているだけなので、一から作っているわけじゃない。
自分で言い出したことだけで、それで褒められるのはちょっと、違ったかも。
「それにしても、なんか、近くない?」
「そ、そうですの?」
僕からポップコーンを受け取って口に含んだシオン。
そんな彼女は今、僕のすぐ隣に位置どっていた。
今はガラガラなんだし、別に離れて座っても大丈夫だと思うんだけど。
「……ち、近かったら、駄目ですの?」
「駄目ということはないけど」
別にくっつかれて暑かったとしても、魔法で簡単に温度調節できるからね。
「それよりも、シオンは暇じゃないの?僕が読んでいるのを隣で読んでいてもしょうがなくない?」
「えっ?」
僕が読んでいるのは自分があまり触れてこなかった封印魔法や召喚魔法などと言ったあまりメジャーではない魔法たちの入門書である。
The・メジャーという王道的な魔法を得意とするシオンがあまり参考に出来るような内容ではないと思う。
「い、いや……」
「んっ?」
「に、人間は時に何も考えずにぼーっとしている時間を作るのも大切なことですの。ですから、本当に気にすることはないですの。私はのんびりと過ごしていますの?」
「そう?それならいいけど……」
僕はシオンの言葉に頷き、自分の視線を魔導書の方に戻す。
「あぁ、そうだ。夕食は何がいい?」
「ティエラに任せますわ」
「もー、地味にそれが一番困るんだよ?」
「むぬっ」
お任せで、というのが一番頭を悩ませてくる。
「そうだなぁ……それじゃあ、久しぶりにお酒飲まない?」
「うぐっ……」
「まだ、初日のことを引きずっているの?」
「どれだけティエラと晩酌をしようとも、あの失態が私の頭から消えることはないですわ」
「ははは、なら飲み過ぎないようにね?美味しいおつまみを作ってあげるよ。飲み過ぎから、食べ過ぎになれば健全でしょう?」
「お手伝いしますわ!」
「うん、ありがとう」
家の中に僕とシオンの二人だけ。
そんな中で、僕たちはまったりとした穏やかな時間を過ごすのだった。
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