冒険者の攻勢
たった四人で巨大なキメラと向かい合っていた中で自分たちの元へと駆けつけてくれた人たち。
「おらぁっ!行くぞぉ!敵を叩きのめしてやれぇっ!」
それは迷宮都市アネッロでその力を極め続けている冒険者たちだ。
彼らはその圧倒的な力でもってキメラを取り囲み、果敢に攻勢を強めていく。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!?」
魔法使いの人たちが発動して展開する鎖にその全身を絡め取られて動きを封じられたキメラが悲鳴を上げている中で。
「炎の龍よっ!」
「雷鳴よ、轟けっ!」
「断崖の鉄槌っ!」
次々と、動けなくなっているキメラへと大量の魔法が集中して打ち込まれていく。
空を駆る巨大な的であるキメラには魔法使いの人々があまりにもクリーンヒットだった。
そんな中で、遠距離攻撃が出来ない前衛職はというと。
「おらっ!お前らっ!魔法使いばかりに良い思いさせるなよぉ!ひけぇぇぇっ!」
「「「おーっ!えーすっ!おーっ!えーすっ!」」」
彼らも、彼らで奮起していた。
キメラの体に巻き付いている鎖をその手で掴み、全員で地面に向かって引き下ろしているような最中だった。
空に攻撃が出来ないのなら、地面にまで落とせばいい。
単純明快な論理であり、それを実際に行ってその思惑通りにキメラの体を地面に向かって引っ張っていくことに成功していた。
「僕たちも負けていられないねっ!」
「当たり前だっ!」
加勢に来てくれた人たちが圧倒的な力を見せている中で、僕とインターリも負けていない。
自分たちが相手にするのは荒れ狂っている蛇の頭を持った尻尾である。
魔法による鎖をかみ切ろうとしている蛇へと攻撃を仕掛けてその邪魔をするのが自分たちの戦いだった。
その蛇の尻尾は非常に硬いうろこに覆われているせいで刃が通らないが、それでも、口の中までも無敵というわけじゃない。
僕とインターリの剣は蛇の口の中になら、剣を突き刺せる。
鎖をかみ切ろうと蛇が口を開けば、僕とインターリからその口を斬り裂かれるせいでうまく行かない。
そんな状況の中で、蛇は先に僕とインターリを倒そうと荒れ狂う他なかった。
「そいっ!」
そして、時折見てはバタバタと空への渇望と共にはためくキメラの翼も一緒に攻撃することで地上の方で引っ張っている冒険者たちの援護としていた。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!?」
そんな攻防を続けることしばし。
ようやくキメラの体が地面へと落ちる。
「おまえらぁぁぁぁぁあああああああああああああああああっ」
その瞬間だった。地面へと落ちてきたキメラの体へと冒険者たちが群がったのは。
「狩り時だっ!」
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「ほらほらっ!珍しそうな体じゃねぇかっ!それを全部はぎ取らせろやぁっ!」
「これで一攫千金よっ!私は爪を貰うわっ!……って、きゃあっ!危ないわねっ!手を動かさないでちょうだい!」
「うぉ!?想像以上にこの蛇の頭危険だぞっ!めちゃくちゃ素早く動くっ!」
「つまり、たけぇってことじゃ……剣がぁぁぁぁぁあああああああああああ!?折れた、折れたぁ!?これ、高かったんだぞっ!?」
冒険者たちは思い思いの欲望をもって、キメラの体に剣を入れていく。
まだ生きているキメラの体に剣を入れ、その皮を剥ぎ、血を採取している。
もはや、戦闘の様はただの解体ショーと化していた。
「……これは、もう終わったかな?」
そんな状況を前にして、僕はぼそりと言葉を漏らす。
だが、それがフラグとなってしまったのか。
「……ッ!?」
急にキメラの体から膨大な魔力が吹き荒れると共に、暴風も吹き荒れ、僕たち冒険者たちも全員吹き飛ばされていく。
「あっつ!?」
そして、そのままキメラの体を起点として熱が吹き荒れ、この場全体がサウナのような状態になる。
「な、何が……っ!」
キメラの体から吹き上がる煙によって、視界が潰される中であっても僕は魔法によって煙を透かして……これは、萎んでいる???
煙を放ち続けるキメラの体は萎み続けており、どんどんと小さくなっていた。
その果てに、残ったのは人型……。
「ハッ!?」
これは、不味い。
僕はほぼ反射的に地を蹴る。
「全員っ!!!」
萎み続けていたキメラの体から煙が放出されなくなり、その体が固まった瞬間。
本能的な恐怖を煽ってくる冷たさを持った暴風が吹き荒れて、先ほどまでキメラがいた場所に立つ一つの人影の全容があらわになる。
「「「……っ!?」」」
突然の事態と背筋が凍るような悪寒の中で、この場にいるほとんどの人間がその体を強張らせて動くのを辞める。
そんな中で。
「退却ぅぅぅ!後は僕がっ!」
地を蹴った僕が向かうのは先ほどまではキメラであった人影の方だった。
周りが呆けている中で、僕だけが剣を構えて、一気に距離を詰めていく。
「……」
そんな僕を前にしてか、キメラだった人影がゆっくりとその腕を持ち上げる。
「……ッ!?」
そして、その次の瞬間。
僕の腕が軽く吹き飛んでいくのだった。
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