攻勢

 僕が絶体絶命に陥っていった中で、弾け飛んでいっていた触手たち。

 それを引き起こしたのはインターリに呼ばれて駆けつけて来たシオンとリトスの二人だった。

 魔法を得意とする二人が一気に敵を削ったのだ。


「シオンっ!」


 シオンの姿を見た瞬間、思わず駆け寄ってしまいたくなる僕だが……。


「はぶんっ!?」


 直ぐに再び触手が僕の方に伸びてきてしまい、それを止められてしまう。


「私のことはいいですわ!」


「うん……っ!」

 

 シオンの言葉も聞いて何とか切り替えた僕は、自分の方に伸びてくる触手を切り落としていく。


「レトンは下がってて!」


「は、はいっ!」


 レトンに下がるように告げた僕はこれまで後退し続けていたのを一転させら迷いなく水柱の方に近づいていく。


「こいつ!こんな滑らかに動くのだな!」


 そんな僕の後にインターリも続いてくる。

 彼は今もなお、僕の飛行魔法で空を飛び、自分の隣に立っていた。


「本当そうだね。僕としても想定外だよ………ここまで敵が動くとは思っていなかった」


 少なくとも、この水柱のまま動くとは思っていなかった。

 もうちょっとあるだろ、見た目。全然緊張感は湧かない。何も言わないし、これが魔王戦だとすると、拍子抜けにも程がある。


「ふぅー」


 とはいえ、そんな見た目にこだわって居られるような余裕もない訳だが。

 僕は一切迷いなく、水柱との距離を詰めて剣を振るい続けていく。


「はぁぁぁぁぁぁああああああああああ」


「らぁぁぁぁぁぁああああああああああ」

 

 僕とインターリはともに自分たちの方に迫ってくる触手を容赦なく斬り落としていく。

 量は相も変わらず、自分たちの方に迫ってくる触手の数は信じられないほどに多かった。

 だが、さっきまでとは違って、僕は一人ではない。隣に立つインターリが居て、なおかつ、圧倒的な力を見せる魔法使いであるシオンとリトスもいるのだ。

 前のような絶体絶命と言えるような状況にはならず、だいぶ余裕を持って触手の対処ができていた。

 だからこそ、本体の方を攻撃できるくらいには余裕があった。


「触れないでね、インターリ」


「わかっているさ!」


 水柱の前に立つ僕とインターリはともに、その相手に生身で触れないように気をつけながら、戦っていく。

 触手を斬り落とし、本体の方もついでに斬りつけ、魔法でも攻撃を加えていく。


「エクスカリバーっ!!!」


 インターリの方も圧倒的な力で水柱を攻撃し、体を大きく削っていた。

 こまめな僕の魔法の攻撃によって削っていき、インターリは彼の代名詞的な技であるエクスカリバーなど、強力な攻撃の数々で削っていく。

 だが。


「雷光よ、来たれ」


「樹木たち、敵を撃て」


 そんな僕たちの削り方が細やかだと思えるくらいに、圧倒的な力でシオンとリトスの魔法によって、水柱の体を大きく消し飛ばしていた。

 二人の魔法の力は圧倒的と言えるようなほどであり、どんどんと無限に思えた水柱の体を大きく消し飛ばしていく。

 このままいけば、水柱の体は全部が消し飛ばせる……。

 

『おぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお』


 そう思っていた中、空気全体を震わせるような音が、水柱の方から響いてくる。


「何……っ!?」


 急な事態の前に、僕が動揺の声を漏らしていた中。


『おぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお』


 急速に目の前にいる水柱がその体を震わせ、急にその姿形を変え始めるのだった。

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