対処
何と形容すればいいのだろう。
自分の前で吹き上がっている緑色の液体。
それは、ただ、見ているだけで……何処か、気持ち悪くなるような嫌な圧迫感を常に与え続けてくる。
『ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』
そして、そんな緑色の液体からは大気そのものを震わせるような低く、おどろおどろしい音が響いてくる。
「これは、マズそうじゃないか?」
それを見るインターリが言葉を少し震わせながらつぶやく。
「……そうだね」
僕はそんなインターリの言葉に頷いて警戒心を覗かせる。
これは、何時までも僕が二人のことを抱えている暇じゃないね。
「……二人とも、手を離すよ。飛行魔法は付与するから、自分でバランスを取って」
「おう」
「あっ、う、うん……」
僕は何があってもすぐに対処できるよう、二人から手を離す。
本当は自分が抱えていた方が、二人に浮かす魔法をかけているよりも、魔力の節約になるから、そっちの方が良いんだけど……ここでそんなことを言っている暇はないだろう。
マジでヤバい予感がある。
「僕たちに残されている選択肢は二つ」
そんな中で、僕は自分の指を二本立てながら答える。
「ここで目の前にこれへと対応するか、それとも何も見なかったことにして帰るか。どっちがいい?」
「いや、流石に逃げられるわけないだろっ」
「わ、私はティエラ様に従いますっ!」
「決まりだね……」
僕は自分の視線を下へと落とす。
溶けている。
緑色の液体に触れている草木が。おそらく、目の前にいるこの緑色の液体は、そのすべてが強力な毒。
こいつを街に近づけるわけにはいかない。街の近くで、こいつの体が崩れてただの液体となって街へと流れこめば、それだけで……街は滅ぶ。
「一体、何を作っていたんだ……」
最初は魔王かと思っていた。
魔族にとっての悲願とは魔王復活。
ただそれだけであり、聖女であるレトンも追放していたことから十中八九魔王復活の為の準備をしていると思っていた……のだが、こんな禍々しい緑色の液体なんてゲームには一切出てこなかった。
これは、一体何なのだ。
本気で意味が分からない。
「……」
とりあえず、様子見をするしかない。
下手に焦って接触して、事態を悪化させたくはない。今のうちに状況を整えるのが一番だろうね……この中で、一番空いているのはインターリか。
「インターリ」
「何だ?」
「街に残してきたシオンとリトスを呼んできてほしい。ほかにも、出来るだけ多くの冒険者たちを集めてきて。この緑色の液体が止まっている間に、こっちの人員を整えよう」
「わかった」
「わ、私が行きましょうか……?」
僕がインターリに人を集めてきてもらおうとしている中で、レトンの方が声を上げる。
「いや、多分、この場で最もあれに対処できるのが僕で、次点にレトンだと思う。僕は基本的に何でも出来るから対応力はある方だと思っていて、レトンの方は回復魔法があるでしょう?それでいざという時に何とかなるし……あと、あの見た目だよ。不浄なものに効く魔法とかが効きそうじゃない?」
「あっ、なるほど」
僕とインターリが出来ることは今のところ、割と被っている。
インターリの強みを僕はある程度の真似っこ出来るが、レトンの方は無理。聖女である彼女とじゃ、あまりにも出力が違う。
僕は不浄なものに当てる浄化魔法とかはあまり得意な部類でもないし。
「それじゃあ、僕が行ってくる。何とか、無事でいてくれよ?二人とも」
「もちろん」
「はいっ」
「それじゃあ、出来るだけ早く戻ってくる」
僕の指示に全員が納得してくれたところで、インターリが自分のかけた飛行魔法を活用して、迷宮都市アネッロの方に向かっていく。
「よし……それじゃあ、僕たちは目の前にいるこいつが何者なのかについて、色々と出来る範囲で探っていこうか」
「そう、ですねっ!」
そして、この場に残された僕とレトンは自分に出来ることを探して動き始めるのだった。
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