制圧

 インターリのエクスカリバーによって、軽々と地面をぶち抜いて最短距離でレトンを救出した僕は彼女をお姫様だっこのような形で抱えながら、周りを見下ろす。

 飛行魔法でこの場の上を取っている僕はただこちらを見上げることしか出来ていない魔族たちの実力を冷静に分析していく。


「……」


 この場にいる者たちのほとんどが研究職なのか、彼らからは強さというものをまるで感じない。

 これなら、僕やインターリで苦戦することはないだろう。

 ただ。


「……あれが?」


 自分の真下にある煮えたぎる緑色の液体。

 そこからは息が出来なくなるほどの圧迫感を感じる……この液体には、何かがある。何か、恐ろしいものが。

 こんな緑色の液体はゲームに出てこなかった。

 ただ、それでも……。


「いや、違うか」


 一旦は緑色の液体からは意識を外し、この場にいる魔族たちへと視線を送る。


「後で集めればいい」

 

 情報なんて後から吐かせればいいだけだ。


「良かった!レトンは無事に救えたかっ!」

 

 そんなことを僕が考えていた中、自分の隣へとインターリも降りてくる。


「あぁ。それと、この場にいる魔族たちは今、見えているものですべてだと思う!レトンのことは僕が守っているから、ちゃっちゃと全員倒しちゃって!」


「了解した」


 そして、僕の言葉に頷いたインターリは地面に足をつけ、そのまま疾走。


「うわぁぁぁぁああああああああああっ!?」


「ひぃっ!?」


「ご、護衛役は何処だっ!」


 その手にある剣を振るい、次々とこの場にいる魔族たちをみねうちで気絶させていく。

 インターリの剣は両刃であるが、側面で叩くことによってみねうちとしていた。


「……護衛役」


 僕はインターリに襲われながら声を上げる一人の魔族の言葉に反応し、ゆっくりと辺りを見渡す。


「そこか」

  

 そして、この場へと入るための入り口。

 自分たちで開けた大穴以外の入り口である鉄の扉を見つけた僕は魔法を発動させて火の球を飛ばし、豪快にその扉を吹き飛ばす。


「腰抜け」


 その扉の先。

 そこには、この中へは入らず、ひっそりを息をひそめていた魔族たちがいた。


「うわぁぁぁぁああああああああああっ!?」


「クソっ!?」


「なんでここがぁ……っ!」


 そんな魔族たちへと僕は一切容赦なく魔法の雨を降らせて撃退していく。


「広すぎて全部は追いきれないな」


 そんな中でも併用してこの場の全容を探知魔法で探ろうとする僕はここの地下空間すべてを把握しようとするが、あまりうまくはいっていなかかった。

 僕が潰した扉の先に広がっている階段に、そこからアリの巣のように分岐して広がっているここはあまりにも広大で、どれだけの魔族がここにいるのかわからなかった。

 というか、ここが深すぎて、地上の方の探知もあまりうまく出来ていない。

 まぁ、城の方には魔族の気配がなかったから大丈夫だとおも───。


「……は?」


 ───大丈夫だと思う。

 そんな、僕の思惑をあざ笑うかのように、一つの影が自分の横を走る。

 

「ちょっ!?」

 

 自分たちがやってきた地上からの大穴。

 そこを通って一人の魔族が地下へと落ち、そのまま僕の隣を通って、更に加速していく。

 そんな僕の真下にあるのは巨大な煮えたぎる緑色の液体の入った大釜である。


「あっ」


 自分の隣を通って真っ逆さまに落ちていった魔族はそのままその液体の中へと落ちていった。

 その瞬間。


「……ッ!?」

 

 緑色の液体から膨大な魔力の渦が吹き荒れると共に、その液体が光り輝き始める。

 何か、来る……っ!


「インターリっ!」


 僕は一切迷うことなく、地面へと足をつけて魔族を倒して回っていたインターリの方へと急降下し、そのまま彼の体を掴む。


「引くぞっ!とりあえず、レトンは救ったっ!!!ここにいちゃまずいっ!」


「お、おうっ!」


「わわっ!?」


 そして、そのままインターリを引き上げると共に、片手でレトンのことをしっかりとホールドしながら、一直線に地上の方へと全力で向かっていく。


「……よしっ!」

 

 そして、僕は地上に出て、そのまま古城の方から出たその瞬間。

 轟音が響き渡り、僕の視界に何処か遠くに飛ばされていった、信じられないものが目に入ってくる。


「嘘……」


 それは古城だった。

 文字通り、古城そのものが地盤から吹き飛ばされ、多くのものをまき散らしながら、森林の上を飛んでいた。


「……何、これ」


 そして、後ろを振り返ってみれば。

 そこには地下の方から湧き上がってきた緑色の液体が噴火した火山のように、湧き上がっていた。

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