古城
迷宮都市アネッロからほど近いところに広がっている広大な森林。
そこを進んでいった僕とインターリを待ち受けていたのは一つの巨大な古城であった。
「何ここ……」
「初めて見るな」
「そう、だね」
そんな古城を前にして、僕も、インターリも共に首をかしげる。
この森林に古城など、ゲームにもなかったはず……これは一体?ゲームに登場させるほどのものでもない、大して意味などないただの古城?
それとも……?
「まぁ、だとしても、ここで止まっているわけにはいかないが」
僕が目の前の古城を前に困惑し、警戒していた中で、自分の隣にインターリは明るく声を上げる。
「仲間を見捨てることなんて出来るわけがない」
「……そう、だね」
僕はインターリのその言葉に頷く。
「それしかないよね。やるっきゃない」
そして、僕の方も覚悟を決める。
ここで逃げるわけにはいかない。
結局のところ、自分に許されているのは真正面からの正面突破だけである。
「行こうか」
「おう」
そして、僕はインターリと共に古城の方へと近づいていき、その中へと入る巨大な入り口の前に立つ。
「……」
入り口の前に立った僕は扉へと手をかける。
「どうだ?このまま入って大丈夫そうか?」
「……うん、大丈夫」
それの扉を開けることで何かしらの罠が作動したりしないことを魔法で確認した僕はゆっくりと古城の扉を開ける。
森林にそびえたつ古城の内部、そこは本当に寂れていた。
エントランスを照らしていたであろうシャンデリアは地面に置いて激しく破損しており、窓もそのほとんどが割れている。
床には大きな亀裂が入っており、エントランスから直接二階へと上がるための大きな螺旋階段も途中で崩れて崩壊している。
そして、壁には多くの植物が生い茂っていた。
ここで何かが出来るとは到底思えないような空間がそこには広がっていた。
「誰もいない、か?」
「おそらくは」
そんな古城の中を僕とインターリは最大限警戒心を持ったまま、進んでいく。
「……というか、この古城そのものに生命反応が感じられない」
そんな中で、そもそもの話としてこの古城内に誰の反応も感じられない僕は困惑の声をもらす。
「本当にレトンはここにいるの?」
こんなところに魔族が聖女であるレトンを連れ去ってくるのか、そうとはとてもじゃないが思えなかった。
「レトンの反応的には、ちょうど、ここの真下だな」
そんな僕の言葉に対して、インターリは襟についている一つのバッチを握りながら答える。
「……下?」
下と言ったって、ここは一階だけど……地下か?
僕はすぐさま魔法を発動して、この古城に地下がないかを探る。
「あった」
地下はすぐに見つかった。
ここからかなり下へと下がった先。
そこに一つの地下室が広がっており、そこには数人の魔族の気配も確認することが出来た。
「項羽クラスの奴はいるか?」
「いや、いないかな」
あくまで、僕が使っているのは相手に魔法の発動を悟られないように秘匿性を高めたものである。
秘匿性に特化させていることもあって、正確性は二の次になってしまうことから間違いない!とは断言できないが、この魔法で確認出来ないかぎりは項羽のような化け物はいない。
「よしっ!ぶち抜こうっ!僕がぶち抜くっ!ティエラはちょっと下がっていてくれっ!」
それを聞いたインターリは力強く頷いて、腰にぶら下げていた剣を引き抜く。
そして、そのままインターリはその剣へと魔力を貯め始める。
彼が発動しようとしているのはゲームの主人公であるインターリの代表的な技である『エクスカリバー』。剣に貯めた魔力を一気に開放して光の剣戟を飛ばす技だろう。
エクスカリバーでこのまま地面をぶち抜いて、最短距離でレトンとの距離を詰めるのだろう。
「わかった。インターリがぶち抜いた後、すぐに穴へと飛び込んでレトンを救ってくるよ!」
その意図を組み込んだ僕はインターリの言葉に頷いて、すぐに動けるよう構える。
「おうっ!」
僕はゲームの主人公であるインターリと共に、本格的なレトン救出のため、大々的に動き始めるのだった。
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