デート
迷宮都市アネッロでの生活は順調そのものだった。
主人公たちの一行が来た後も特に問題はなく。
僕はシオンと共に穏やかな日常を送り、ダンジョン攻略も順調。そろそろ20階層という大台も見えてくるような頃にあった。
「よし、それじゃあ、これからどこに行く?」
「え、えっとですね……」
そんな生活のある日、僕はレトンと二人で街へと出かけている最中だった。
「まずは買い物から行きましょう……っ!朝の市場行きますか?」
「待って?その選択肢はデートのものじゃない?いつも、自分たちが買い物に行く商店街へと行こうとしているよね?」
「えっ!?ダメなんですか!?」
「流石にロマンティックがなさすぎるでしょ。いくら何でも実用的すぎるよ」
僕とレトンは今、たまにある珍しく市場でたまたま一緒になって、という形ではなく、前もって約束したうえ、二人で行動していた。
その理由は、レトンに頼まれたからだ。
何でも、レトンの婚約者候補の人とここでデートすることになるらしい。
それに備え、その練習相手に付き合ってほしいということだった。
「もうちょっと考えようか」
えぇ、今、目の前で起きていること。
このイベントもしっかりご存知ですとも。
今、目の前で起こっているこれは、ゲームでレトンが主人公であるインターリに頼んで起こったデートイベントだろう。
最終的にレトンの婚約者候補の人が冒険者などという下賤の者の多い迷宮都市になんて行けるわけないだろうっ!と投げ捨てたことで本番は行われなかったが、練習として行ったデートでインターリとレトンの絆がより一層深まるというイベントだったはずだ。
そんなイベントのお株を僕が奪ってしまうような形になったのだが……とりあえず、僕は自分の役目を果たすべきだよね。
向こうが必ずしも断ってくるとは限らないし。
全然、自分も知らないような魔物が迷宮内に現れたり、ということもあったし。
「市場はダメですか……買い物はデート向けだと聞いていたのですが」
「チョイスに問題あるね。一緒に食品を買いに行くのはもう同棲し始めているし、デート扱いじゃないかな」
「……むむぅ」
「買い物行くなら、普通に大通りの露店街でいいと思うよ。あそこならここ特有のご飯とかもあるし、なおかつ、迷宮から上がってくる魔物の素材を用いた多くの品々とかもあるからね。おすすめだよ」
「なるほどです……なら、まずはそこに行くこととしましょうっ!」
「そうだね」
待ち合わせ場所として集まっていた時計堂から僕とレトンは一緒に大通りの方に向かって歩き始めるのだった。
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