ゲームの主人公たち

 自分の前にいる一団。

 それはゲームの主人公であるインターリを中心とするメンバーだった。


「良かった……無事だったんだな。本当に心配したんだぞ。だが、お前が無事でよかった」


「無事でよかったぞぉっ!」


「本当に良かったっ!良かったわぁーっ!」


「皆さん、心配させてしまい申し訳ありませんでした」


 そんな彼らは今、どういう経緯かは知らないがハグレてしまっていたレトンとの感動的な再会を前にする僕は何とも言えない気持ちを抱いていた。

 ゲームの主人公に会えたことへの嬉しさがあるのだが……今の僕の隣にはシオンがいる。

 シオンとの因縁がある彼らを前にする僕はもー、なんか、こう複雑だった。


「……あれだね」


 何でこんなタイミングで会うのか、なんてことも考えた僕であるが、よくよく考えてみれば悪役令嬢であるシオンが追放されるのゲームの三章。

 そして、ゲームの四章で舞台となるのはここ、迷宮都市アネッロ。

 ふつーに考えてみれば、シオンを追放した主人公たちがゲームのシナリオ通りにアネッロへと来るのは少し考えればわかることだったなぁ……めっちゃ忘れていたよ。

 馬鹿じゃん、僕。


「あの、ありがとうございました」


 なんてことを一人で考えていた中、感動の再会をひとしきりやり終えたレトンが僕の方へと再び戻ってきて深々と頭を下げてくる。


「んっ、あぁ……大丈夫だよ。冒険者は助け合っていくのが原則。僕は当然のことをしたまでだよ。それよりも怪我の方は大丈夫だった?」


「はい、大丈夫です……ご心配してくださってありがとうございます」


「これくらい当然だよっ」


 僕は自分へと笑みを向けながら再度、お礼の言葉をかけてくるレトンへと爽やか(当社比)に言葉を返す。


「というか、申し訳ないっ!ここまで恩人である貴方を無視してしまっていて。今回のことは本当に感謝している。この恩は一国の王子として、必ず最高の形にして返すことを誓わせてもらう」


「おぉー!!!お前がレトンを救ってくれた男かァっ!心の底から感謝を申し上げるっ!この恩!一人の男として、生涯忘れることはないと誓おうっ!」


「本当にありがとう!貴方はレトンの命の恩人よ!この恩返しは必ずするわっ!」


 そんな僕へと他の三人の方が一気に近寄ってくる。


「いや、そんな前のめりにならなくても大丈夫だから……それで?これからはどうする?」


 そんな三人の勢いに押されつつある僕はそれでも負けじと、彼らがこれからどうするかを尋ねる。

 レトンがあんなことになっていたから流石に帰るだろうか?もしも、帰るならちゃんと送った方が良いよね。

 ゲームの主人公であるインターリたちと友好的な関係値を築いておくのは悪くないよね。

 ただでさえ、僕は既にインターリたちと因縁を持つシオンを仲間に持っているということから、スタートの段階でマイナスの印象を抱かれている可能性が高いのだ。

 ここで出来るだけ好感度を稼いでおけば、後々効いてくるかもしれない。


「まだ序盤ではあるが、今日は帰った方が良いだろうな。反省点はいくらでもある」


「そうだな。ヒーラーと離れ離れになってしまうなんて最悪の失態だぞ。絶対的にも程がある大失態だ。国に帰ればどやされるだろうな」


「そんなことはどうでもいいわ。とりあえず、レトンのことが心配よ!」


「私は大丈夫ですよ……?」


「大丈夫じゃないわっ!万が一に備えないとっ!」


「もう今日は帰ってゆっくりとするべきだな。よし。何か楽しいパーティーでもするか?恩人もいることだ。しっかりと傷を癒せるようなご飯を食べて、楽しい記憶で一日の思い出を埋め、疲れ果てて眠る。これが一番だと思うのだが」


「おぉーっ!それは良いなァッ!実に良いっ!ありだァッ!」


「良いじゃないっ!大賛成よっ!」


「だろう?」


「「おぉーっ!」」


 おぉ……勢いが凄い。

 これが陽キャか。


「申し訳ありません……私の仲間たちが勝手に大盛り上がりしてしまって。彼らにも悪気があるわけじゃないんです」


 僕が彼らの勢いに呑まれているということを察したレトンが自分の方へと視線を向けて、そのまま苦笑しながら謝罪の言葉を口にする。


「いや、大丈夫だよ。元気なことはいいことだからね」


 そんな言葉へと僕はこちらも苦笑と共に言葉を返す。


「って、すまない。またあなたを蚊帳の外に置いてしまった。すまなかった」


 ……僕が陰キャ過ぎて蚊帳の中に入れないだけな気がするけど。

 それで謝れるの申し訳ないな。


「大丈夫だよ」


 なんてことを考えながら僕は笑顔で答える。


「俺たちはこれからパーティーでもしようと思っているんだ。そこで恩人である貴方も招待したのだが、どうだろうか?」


 あー、あー、あー。

 これ、シオンは参加できない、よな?僕一人だけで行くのもなぁ……まぁ、一旦、シオンに確認を取ってから最終的な結論を出せばいいか。

 というか、だ。


「まずは、それよりも前に僕はやることがあるから先にそれを済ませちゃっていいかな?」


 僕ってばまだ、シオンに内緒でダンジョンへと来た目的を果たしていないや。

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