第二章 モブと主人公
出会い
迷宮都市アネッロへと僕とシオンがやってきてから早いことでもう一週間と少し。
既に僕とシオンもこの街での生活に慣れ、ダンジョン攻略も順調そのもの。
15階層を超え、16階層にまでやってきていたような段階だった。
全部で50階層まであるこのダンジョンだが、今のところ攻略されているのは28階層まででしかない。
15階層を超えたら、もうダンジョン攻略者としては上級者と言えるような立場となる。
僕とシオンは順調にそんな壁を軽く超えたのだった。
「ふんふんふーん」
そんな僕はシオンに内緒で一人、ダンジョンの方へとやってきていた。
「退いてねー」
たった一人でダンジョンに来た僕は16階層から17階層へと向かうのではなく、上層の方に向かって進んでいた。
ちなみに、ダンジョンでは入ってすぐを上層、そこから階層を進んでいくと下層と呼ぶようになる。
つまり、僕は今、一階層に向かって突き進んでいた。
「よしっ、この辺りになればもう楽々ちんちんだな」
爆速でダンジョンを突き進んでいき、十階層へと着いた僕はボス部屋にいる強力な魔物を軽く一人で討伐し、そのまま十階層を進んでいく。
十五階層のボス部屋にいる魔物なんかは流石に単独での勝利が流石に難しくて戦わずに逃げてきたのだが、この階層にまで来ればボス討伐も可能となってくる。
「まぁ、だからと言って何かを変えるわけでもないけど」
僕は出来るだけ魔物との戦闘は避けて九階層の方へと向かっていく。
自分の目的地は九階層である。
そこで、どうしてもやりたいことがあるのだ。
「きゃぁぁぁぁぁあああああああああああああああ」
そんなことを考えながら、ダンジョンを進んでいると何処からか悲鳴が聞こえてくる。
「っとと」
その悲鳴を受け、僕はその場で急ストップ。
「ぎゃぎゃっ!」
「……こっちか?」
急に立ち止まった自分へと襲い掛かってくる最初は回避して通り抜けようとした魔物を軽く剣で斬り捨てた僕は悲鳴が聞こえてきた方向へと視線を向ける。
「流石に見捨てられないよね」
やりたいことがあるとはいっても、だからと言って簡単に悲鳴を上げている人を見捨てることなど出来ない。
僕が悲鳴のした方向へとやってくると。
「……なるほど」
そこには多数の魔物に囲まれている神官服を着た少女がうずくまっていた。
「ふぇぇ……いや、いやぁ……ぐずっ、痛い……やめてぇ」
魔物に囲まれてボコボコと攻撃を受けていた少女は泣きながら自分へと回復魔法をかけ、魔物につけられる傷を片っ端から治していた。
「ずいぶんと腕の立つヒーラーだこと」
涙で顔をぐちゃぐちゃにしているような状況でも、すべての傷を一瞬で治していっている回復魔法の腕に感心する僕は迷いなく少女を囲んでいる魔物たちへと向かっていく。
「助けますっ!」
「……えっ?」
そして、自分の手にある魔剣グリムを一振り。
それで少女へと一心不乱に攻撃を仕掛けていた魔物たちを横から両断する。
「おぼぉ……!」
「ぎゃぎゃっ!?」
「ぐごぉーッ!」
そんな中で、まだ生き残っている魔物たちがいきなり現れた僕へと一切の迷いなく突撃してくる。
「遅い」
そんな魔物たちの攻撃を軽いステップですべて回避した僕はその振り返りざまに剣を振るい、彼らの首を跳ね飛ばしてやる。
「いっちょ上がり」
これで全滅だ。
流石に十階層の魔物が相手では苦戦しない。
「大丈夫ですか?」
魔物を倒し終えた後、僕は地面へと倒れていた少女の方へと視線を向け、そのまま自分の手を差し出す。
「あ、ありがとう、ございます……」
「……って、あれ?」
そんな少女の相貌を改めて真正面から確認した僕は首をかしげる。
「な、なんでしょうか……?」
そんな僕に同調して目の前にいる少女の方も首をかしげる。
ちょうどそんな時。
「大丈夫かーっ!レトンっ!」
「どこだァ!れとぉーんっ!」
「レトン!?レトン!?どこなの、レトン!無事なら返事をして」
とある三人組がこちらの方へと近づいてくる。
「わーぉ」
そんな一団を見て僕は驚きの声を漏らす。
彼らを見間違えるはずもない。
今、近づいてきているのはインターリ・アンファング、ジャーダ・メディウム、リトス・カニエーツ、の三人。
ゲームの主人公であるインターリを中心とする一団だった。
「……なるほど」
となれば、僕の手を取って立ちあがった少女はゲームのメインヒロインである平民出身の聖女であるレトンじゃないですか。
シオンの因縁の相手である。
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