その次のページ
次の日、僕は恵奈にメッセージを送りました。
〈昨日はありがとうございました、今度の日曜日、七夕ですが、一緒に夏祭りに行きませんか?〉
何時間経っても既読が付きませんでした。さらに翌日、僕は、〈お疲れ様です。暑いですね。体調を崩されてはいませんか。水分補給に気を付けて、お過ごしください〉やはり、既読は付きませんでした。その次の日。〈大丈夫ですか? 体調崩されてません? 心配しています〉いくらまっても既読が付きませんでした。
そして、七月六日。僕はメッセージを送りました。
〈明日、M神社である七夕祭りに行きません? そして、その後、ご飯食べに行きません? すごくおいしいイタリアンのお店があるんです。どうですか?〉
一日中、スマホを握り閉めていましたが既読は付きませんでした。翌日の朝、つまりは失月七日、僕は、再度、〈浴衣じゃなくても大丈夫です。会いたいです。お祭り行きません?〉
返信は七月七日が終わっても、来ませんでした。
日付が変わったころ、スマホを見つめがなら、ため息が零れました。それは次第に舌打ちに変わりました。チッ、チッ、チッと打つたびに、苛立ちのバロメーターが上がっていき、胃液がヘドロに変わったかのように不愉快になりました。
それから僕は毎日恵奈にメッセージを送りました。既読が付かないのはわかっていました。それでも、もしかしたら、と期待してしまっていました。仮に返事が返ってきたとしても、僕が期待しているものではないこともわかっていました。それでも、もしかしたら、と思わずにはいられなかったのです。
実は体調を崩していて入院しているのかもしれない。スマホを使えないほど重症なのかもしれない。だから、返信が出来ないのだ。
もしかしたら、別れたいけど別れられない暴力をふるう彼氏がいて、そいつに見られたらマズいから返信が出来ないのかもしれない。本当は返信が出来なくて、申し訳ないと思っているのかもしれない。僕はそう考えていました。そう考えなければやってられなかった、というのが正しいのですが。
頭がおかしいですか? そうでしょうね。そう思われても仕方ないと思います。でも、何と言われようと、恵奈は、初めて僕に、「ありがとう」と言ってくれた女性だったのです。僕と向かい合って食事をしてくれた人だったのです。僕の話を笑いながら聞いてくれた唯一の存在だったのです。僕にとって、とても大切な人だったのです。そんな人が、僕を無視しているなんてどうしても思いたくなかったんです。
でもね、本当はわかっていましたよ。拒絶されているって。わかっていますよ。そりゃ。僕もそこまで馬鹿じゃないんで。でも、やっぱりすがりたいじゃないですか。もしかしたら、に。
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