第2話 願う力

突然戻って来た彼女。


お互いの願う気持ちが、

そんな事を、叶えて、現実になった。


「これは、二人の魔法だね。」


そう、彼女が言った。。。


彼女の名前は、

橋本 幸恵 


僕の名前は 

小宮 誠


偶然の出会いから、

直ぐに、打ち解けて、

それから、ずっと、一緒に過ごした。


交際期間は、2年と少し。


僕が、三週間の出張予定が、

3ヶ月になり、その間に、

彼女は、事故にあって、

いなくなった。


そんな、彼女が、僕の元に、

帰って来た。


「これから、どうしよう?」


「どうするって、取り敢えず、

ご飯食べたら?」


「ああ、そうか。今日、

何も、食べてなかった。。」


「幸恵も、何か食べる?」


「ごめんね。私、

生き返った訳じゃないから、

お腹すかないの。」


「ああ、そうか。

じゃあ、僕だけ、悪い。」


「ううん。食べてる時、

傍にいるから。遠慮しないで、

ちゃんと、食べて。」


「わかった。」


冷蔵庫に、入っている、

レトルトのカレーを、

温めて、ご飯に乗せる。


「どうしたの?」


「誠の、ご飯食べるところ、

見てるの、好きなだけ。」


「ふふっ。そうだったね。」


彼女の、日記にも、

僕が、ご飯食べてるのを、

見てるのが、好きだと、

書いてあったから、知ってた。。


「う~ん。でも、そんなに、

見つめられると、食べずらいよ。」


「じゃあ、ちょっとだけ、

横向いてるね。」


「なんか、ごめん。」


「ほら、気にしないで、

早く食べて。」


「うん。」


僕は、「ぱくぱく」と、

なるべく、急いでご飯を食べた。


「ちょっと、片付けちゃうね。」


「うん。」


お皿一つと、スプーンを、

さっと洗って、

幸恵の座る向かいに、

僕も座る。。。


「なんだか、夢みたいだよ。」


「ふふっ。夢ではないでしょ。」


「これから、どうなるんだろう。」


「だからさ、考え過ぎだよ。」


「じゃあ、ご飯食べたし、

少し、散歩でも、行く?」


「うん。じゃあ、そうしよ。」


僕は、靴を履き、彼女を連れて、

外に、散歩に出た。


「久しぶりだなぁ。なんか、

懐かしい気がする。」


「そうだね。前は、良く、

二人で歩いたね。。」


「ねぇ、誠。駅まで歩こうか。」


「いいよ。歩こう。」


「あ、花火大会、もうすぐなんだね。」


「そうだった。一緒に、行く約束。」


「行こうよ。花火大会。」


「もう。何で泣くのよ。」


彼女との、約束が、果たせる。

そう考えたら、自然に、

涙が、落ちた。


「いや、ごめん。何か、嬉しくて。」


「大袈裟だよ。いつから、

そんなに、泣き虫になったのかな?」


「ごめん。また、困らせたね。」


「ふふっ。すぐ謝る。」


「ごめん。」


「ほらまた。」


「あははっ。また、謝っちゃった。」


「やっと、笑ったね。」


「幸恵が、そんな事言うから。」


「誠の笑った顔、大好き。」


「うん。知ってる。」


「あ~。そう言えば、私の、

日記、読んだでしょ。」


「ごめん。読んだ。」


「まぁ。誠なら、良いか。。」


「あんなに、思ってくれてたなんて、

知らなかったよ。。」


「恥ずかしいから、辞めて。

誠のエッチ。」


「いや、そう言うつもりじゃ。」


「あははっ。知ってる。」


「喉渇かない?」


「うん。私は、平気。誠は、

ちゃんと、飲んで。」


「ごめん。じゃあ、珈琲飲むね。」


自販機で、珈琲を1本買って、

ぐっと、飲み干す。。


「わぁ。相変わらず、早いね。」


「まぁ。結構、カレーを食べて、

何も飲んでなかったから、

ちょっと、喉渇いてて。。」


「そうだよ。ちゃんと、

水でも何でも、飲まなきゃ。」


「うん。次からそうするよ。」


「駅見えてきたね。」


「そうだね。」


「この駅から、私、毎日、

バイト行ってたんだよねぇ。」


「うん。そうだったね。」


「でもさ、お腹空かないし、

喉も渇かないから、

お金も、もう、要らないね。」


「大丈夫。必要なら、

僕が持ってるから。」


「うん。そうだったね。ありがと。」


「誠。疲れちゃうから、

帰ろうか。。。」


「うん。じゃあ、ゆっくり、

歩いて帰ろうか。」


「手繋ぐ?」


「うん。」


彼女の、恥ずかしそうな、仕草。

暖かい、手。


「誠の、手、大きくて、暖かいね。」


「僕の手も、好きだったんだよね。」


「もう、日記の話は辞めて。」


「僕も、幸恵の手、好きだよ。」


幸恵は、下を向いて、赤くなる。。


「そんな事、普通に言う?

恥ずかしいなぁ。もう。」


「何だろう?思ってることは、

ちゃんと、言わないと、

いけない気がしてさ。」


「うん。でも。そうだね。

言わないと、わからない事って、

結構あるよね。」


「うん。だから、幸恵に、

謝らないといけない事がある。

出張、行って寂しくさせてごめん。」


「うん。寂しかったよ。」


「病院も、行けなくてごめん。」


「うん。私も、ごめん。

頑張って、生きてたんだけど、

ちょっと、耐えられなかった。」


「つっ。」


「誠に、合いたくて。

頑張ったんだけど。ちょっと、

打ち所悪かったみたい。」


「僕の方こそ、ごめん。」


「もう。終わった事だから、

そう言うの、辞めない?」


「あと一つだけ。。。

お葬式も、行けなくてごめん。」


「もう。私が、死んだのも、

知らなかったのに、

来れるわけ、無いじゃん。。」


「ううっ。」



「本当に、泣き虫だなぁ。

誠も、こんなに泣くんだねぇ。

前は、泣くとこなんて、

一度も見たこと無かったのに。」


「それは、君が、幸恵がいたから。」


「いたから?」


「幸せだったから、泣くわけないよ。」


「ふふっ。ありがと。私も、

誠と、過ごした時、幸せだったから、

泣いた事ないなぁ。」


「出張の夜は、悲しくて泣いたって。」


「だからぁ。辞めて、もう、

そう言う事言う人は、ヘンタイだよ。」


「ヘンタイって。ふふっ。あははっ。」


「あははっ。可笑しいの。でもね、

誠が、隣にいれば、それだけで、

私、何もいらなかったんだ。

出張行ってさ、三週間でも、

長かったのに、三ヶ月って、

絶望しそうになったの。」


「うん。断れば良かった。」


「出来たの?そんな事?」


「こんな事になるなら、

会社辞めてでも、行かなかった。。」


「ほら、現実的に、

無理な話しでしょ。誰も、

思わないから、そんな事。」


「僕だって、出張は、

行きたくなかったんだよ。

幸恵と、離れるのも嫌だった。」


「知ってる。行く前、

顔暗かったもんね。

だから、頑張れって、

送り出したんだもん。」


「うん。だから、頑張ろうって、

向こうで、頑張れたんだよ。」


「うん。偉いよ。誠は。」


「でも、それで、余計、

仕事増やされて、帰れなくなった。」


「まぁ、出来る男なんだから、

仕方ないじゃん。」


「ねぇ。幸恵。子供って。

どうなったの?」


「。。。。。。うん。

私、妊娠初期で、健診行ってさ、

病院行って、嬉しくて。。

早く、家に帰りたくて、

雨がね、降ってきてさ。。。

横断歩道は、青だったんだけど。。

トラックがね。突っ込んできちゃって、

お腹守ったんだけど、

駄目だった。。」


「だから、自分の頭、

守れなかったんだね。。」


「だってさ。誠が、必死に、

出張から抜けて、帰ってきて、

その時の、子だよ。

自分より、咄嗟に、お腹守るでしょ。」


「。。。ありがとう。僕のかわりに、

守ってくれて。。」


「誠、ごめんね。誠の、赤ちゃん、

生んであげられなくて。。」


「幸恵。僕も、君が隣に、

傍にさえいてくれたら、

それだけで、幸せだったから、

そんな顔しないで。

その方が、僕はもっと、辛い。」


「うん。そうだったね。。。

でも、ちゃんと、話せて、

良かったなぁ。

私、これだけは、ちゃんと、

自分の口で、言いたかったの。」


「うん。ちゃんと、聞いた。。

僕は、幸恵に感謝しかない。

それに、子供を守った、

幸恵は、立派だと思うよ。」


「うん。ありがとう。

私も、何か、誠にそう言われて、

スッキリしたよ。。」


「僕が、幸恵を責める事は、

絶対に、ないから。」


「うん。そうだったね。

いつも、支えてくれて、

ありがと。」


「いや、僕の方が、

いつも、支えられてたと思うよ。

いつだって。」


「誠は、いるだけで、

私の支えだったよ。」


「それは、僕も同じだよ。

ずっと、思ってた。

幸恵がいれば、何も要らないって。」


「うん。面と向かって言われると、

私、本当に、凄く幸せだよ。」


僕と幸恵は、家に戻って、

久しぶりに、二人で、

ゆっくりと眠った。。。




















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る