煌めく町の片隅で

gonnaru

第1話 君の魔法

魔法なんてものがあるのなら、

そんな幻想に浸ってでも、

叶えて欲しい事がある。

どうか。。。


町を歩いていた。

特に目的は決めていない。

今日と言う日を、普通に生きてる。


夢から覚めて、起きた時、

ああ、今日も始まるんだね。

そう思いながら、起き上がる。


毎日は、当たり前に、続いてる。

そう思って、生きていられたら、

とても、幸せなんだろう。


僕は冷たい人間なんだろうか。。

大切な人を失った時も、

仕事をしていた。。


出張に出てた。

でも、それは、毎日が、当たり前に、

続くと思ってたから、

何も、疑いもなく、生きていたから、

帰れば、そこに、君がいると、

思っていたから。。


でも、現実は違った。


僕はさ、とっても、幸せだったんだよ。


君に逢えて。

君がいれば、

それだけで良かった。

君の声を聞いて。

ちょっと、照れ臭そうに、

手を繋いで、歩いたり。

何気ない、会話をしたり。

時おり見せる、君の笑顔を見て、

たまに、髪をかきあげる、

その仕草。


当たり前と思いながら、

君が、隣にいるうちに、

せめて、両親に合っておけば、

事故に合った君の元に、

駆けつけられたし、

葬式にも、ちゃんと、出てあげられた。


でもさ。何だろうね。

君が隣にいてくれて、

こんなに、幸せを貰ってたのに。

僕は、君を、この不条理から、

救ってあげられなかった。


毎日は、当たり前じゃなかった。

君と、付き合って、

君を失って、僕が気付いたのは、

それだけなんて、

とても、虚しくて、寂しい。


だから、かな。


とても、独りになった。


でも、独りでも、君の笑顔が、

頭から離れないから、

きっと、大丈夫だよ。


最初は、生まれて初めて、

死にたくなった。。

この世界は、あまりにも、

生きてるのが、辛すぎて。


そんな事を考えて、

数日過ぎて、ある日、

夢に、君が出てきた。


夢の君は、とても、悲しそう。

僕は、「初めて君のそんな顔を見たよ。

そんな、顔もするんだね。」


夢の中の君に話しかけた。


「だって、辛そうだから。」


「そうだね。君が、いないから、

何も、やる気が起きない。」


「ちゃんといるよ。」


「どこに行けば、また、あえる?」


「そうじゃないよ。」


「どう言うこと?」


「私は、ここにいる。」


「ここって、僕の中に?」


「他に、どこがあるの?」


「。。。確かにそうだね。」


「フフッ。馬鹿だなぁ。」


「でも、もう、抱き締める事も。。

出来ないよ。」


「でもね、私は、ここにいるから。」


「そうだね。僕も、

意地悪な事、言ったね。」


「うん。私も、本当は、

抱き締めてあげたい。」 

 

「わかってるよ、ごめん。ねぇ。

また、会える?」


「会えるよ。だって、

私は、あなたの中に、いるんだから。」


。。。


目が覚めて、頬の涙を、指で拭う。


また、今日が、始まったね。


当たり前の様に、仕事に行く。


「大丈夫。大丈夫。」と

自分に、おまじないをかけて。


「独りにしないよ」って、

君は言ってたけど、

あれ、本当だったね。


死んだら終わりじゃなかった。


夢にまで、出てきて、僕を支える。

そんな事が、出来るなんて、

君は、魔法使いだったんだね。


「ふふっ」と、笑ってしまった。


最近、仕事から帰ると、

意味もなく、散歩に出掛ける。


家にいると、君がいない。

そんな実感に、

押し潰されそうになってしまう。


そんな、毎日の繰り返し。


家に帰ると、君が付けていた、

日記を、読む。


その内容が、幸せいっぱいで。。

僕が、君を、ちゃんと、

幸せに出来ていたと、実感する。


後から、わかっても、

やっぱり、辛い気持ちが、

込み上げてくる。。。


暗くした部屋にいても、

少しの光が、眩しく感じて、

両手で、目を隠す。。


そのうち、眠りに就いて。


「そんなんじゃ、体持たないよ。」


「ごめんね。心配させて。」


「色々、考え過ぎ。」


「何が。」


「もっと、楽に行きなよ。」


「楽にって、

どうすればいいんだっけ。

今の、僕には、わからないんだよ。」


「そんなに、張りつめてたら、

駄目だよ。深呼吸して。

ゆっくり、息を吐くの。」


「わかった。やってみるよ。」


「そう。そんな感じ。」


「ありがとう。少し、楽になった。」


「ねえ。私も、ずっと、

傍にいるから。ちゃんと、

生きてみてよ。」


「生きてるよ。」


「違うよ。前に向かって、

生きて欲しいの。」


「どう言うこと?」


「今の、あなた、立ち止まって、

動けてないよ。」


「そんな事、言われても。。」


「ほら、そんな顔しないで。」


「ごめん。また、心配させて。」


「いいよ。傍にいるから。」


「ありがとう。」


また、目が覚める。

起き上がると、君の教えてくれた、

深呼吸をして、ゆっくり吐いた。


「落ち着いた。ありがとう。」


そう言いながら、着替えて、

仕事に出掛ける。


僕は、まだ、君を愛してる。

いなくても、逢えなくても。


君の魔法に、救われて、

毎日を、生かされてる。


僕も、そんな魔法使いに、

なりたくて、毎日を、

生きて行こうって、そう、決めた。


最初から、君の幸せしか、

願っていなかったから。


僕の願いって、叶ったのかな。

叶うのかな、これから。


毎日を、君を想って、

歩き続ける。

例えば、町の中を、歩いていても、

君と、歩いた、町並みが、

いない君を、ちゃんと、

思い出させてくれるから、

僕は、歩き続ける。


通いなれた、何時もの道。


そう言う場所には、

何時も、君がいて。


寂しい気持ちと、暖かい気持ちと、

混ざりあって、一つになる。


「ふふっ。可笑しいの。

こんなんで、生きていけるのかな。」


ふと、口から言葉が漏れる。。。


「でも、生きて行かなくちゃ、

君に、怒られちゃうね。」


そう、呟いた。


また、家に戻り、シャワーを浴びて、

眠りに就く。


「今日も、元気ないね。」


「そうだね。元気ないよ。」


「ほら、しっかりして。」


「ちゃんと、やることは、

やってるよ。」


「仕事の事じゃなくてさ。」


「どう言うこと?」


「ちゃんと、前を向いて、

前に向かって、生きて欲しいの。」


「そのつもりだけど。。。

僕、出来てないのかな。」


「頑張ってるのは、ちゃんと、

見てるよ。でも、そんな顔じゃ、

私の好きな、あなたの顔じゃない。」


「そう。でもさ、その顔は、

君の前だから、出来たんだよ。」


「それなら、大丈夫。

だって、私は、あなたの前に、

ちゃんと、いるでしょ。」


「ごめん。また、困らせたね。

そうだね。今でも、君の前だった。」


僕は、できる限りの、笑顔を、

作って見せた。


「そう、その顔。忘れちゃ駄目だよ。」


また、朝が来て。

鏡の前で、君を想って、

笑顔の練習。


「うん。大丈夫。大丈夫。」


そう、唱えると、着替えて、

仕事に出掛ける。


当たり前の、毎日なんか、無い。


それなりに、働いて、

仕事を終えて帰ってくる。

どうしても、考えるのは、

君の事だけ。。。


そんな現実に。僕は、

押し潰されない様に、

生きようと、強く願った。。。

不思議な感覚が、漂って。。。



「ねえ。」


「えっ。」


「夢、見てるのかな?僕は。。」


「ふふっ」


ボロボロと、涙が落ちる。。。


「泣き虫だね。」


「また、逢えたね。」


「どうして。いるの?」


「心配し過ぎたら、こうなってた。」


「こうって、どう言う事。。。」


「う~ん。私にも、良くわかんない。」


「触っていい?」


「いいよ。」


彼女の頬を軽く、撫でる。。。


「暖かい。」


「ストン」と、腰から僕は、

砕け落ちた。。。


「もう。そんなんだから、

心配で、出てきちゃったんだよ。」


「じゃあ、幽霊って事?」


「う~ん。良くわからないけど、

そう言うの、信じてないし、

幽霊とか、怖いじゃん。

だから、

魔法使いって、事で。

あなたも、夢で、

そう思ってたでしょ?」


「そうだね。確かに。」



「また、一緒にいられるの?」


「それは。。。わからないけど、

取り敢えずは、一緒だね。」


僕は、立ち上がって、彼女を、

抱き締めた。


「おかえり。」


「ただいま。」


やっぱり、彼女は、

魔法使いになったみたいだ。。。

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