第5話 「怖い」側にも怖いものはある
「あんたたちのやったこと全部撮影したんだから!もう終わりだね!!」
レイコがスマホ片手に金切り声で捲し立てる。
「なにが目的だ!脅迫か?」俺は尋ねると、レイコは「復讐だよ」と小さく呟き香織の方を向いた。
「私は、あんたが殺した元夫の妹だよ!」
香織が殺した?どういうことだ?DVが原因で離婚して逃げてきたんじゃないのか?
「あれ?あんたまさか何も知らないの?」レイコが嗤う。
「私の兄はまんじゅうを喉に詰まらせて死んだんだよ。あの女に無理矢理口に詰め込まれてね」
「なんだよそれ。どういうことだよ。香織、違うよな。レイコがでたらめ言ってるだけだよな」
香織は何も答えず、レイコに近づく。レイコはナイフを取り出した。
「こ、これ以上近付いたら刺すよ」
「やってみれば?」香織は動じない。
香織に気圧されたレイコが一歩後ずさる。
膠着状態かと思われたとき「あっ蛇だ」と香織がレイコの足元を見ながら言った。
レイコが「えっ」と視線を地面に移したその瞬間、香織がレイコの持つナイフを奪ってレイコの首元に刺した。
レイコは「あっ」と小さな声を出して、ゴボゴボと血が噴き出しながら倒れた。
数刻の間バタバタと動いていたが次第に動かなくなった。
「死体を埋める穴、もうちょっと大きく掘らないとダメみたいね」香織は笑った。
今日初めて見る笑顔だった。
「私、ちょっと車探してくるね」
「車?」
「レイコの。ここまで来た車が近くにあるはずだから、それをどこかの木か岩にぶつけるの。車が事故って山の中を当てもなく歩いて遭難したって警察が判断するように」
伸びた爪を切るかのような表情で淡々と言う香織。これが本当の香織の姿なのか?
呆然としている俺をよそに、香織はレイコの車を探しに行った。
俺の目の前には血まみれのレイコの死体があった。
死体から少し目をそらすとメモ帳が落ちているのが目に入った。
俺はそれを拾ってタイトルを見る。
【呪 祝太郎探偵ノート】と書かれていた。
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