第2章 喪失と決意 :2-3 遺された手がかり

事件から数日が経ち、警察の現場検証が一段落したことで、剛志は翔太の家に再び訪れることができるようになった。

翔太の家の前に立つと、剛志は深呼吸をし、心を落ち着けてからドアを開けた。


翔太の部屋はいつもと変わらないように見えたが、その中には事件の痕跡がまだ残っていた。

部屋の中央には、黒い魔法陣が薄く残っており、剛志の目を引いた。

彼はその場に立ち尽くし、一瞬のうちにあの日の悪夢が頭をよぎった。


剛志はゆっくりと部屋の中を歩き回りながら、翔太の残したものを一つ一つ確認していった。

机の上には、翔太が大学の授業で使っていたノートや教科書がきちんと並べられていた。

ノートを手に取り、ページをめくると、翔太の几帳面な文字がびっしりと書かれていた。

彼の努力と真剣さが伝わってくる。


本棚には、翔太が読んでいた本がずらりと並んでいた。

コンピュータの専門書やプログラミングの教本、そしてミステリー小説まで多岐にわたっていた。

翔太は読書が好きで、特にミステリー小説を読むことでリラックスしていたことを剛志は知っていた。


部屋の隅に置かれたギターも、翔太の趣味の一つだった。

彼は暇な時間にギターを弾き、音楽を楽しんでいた。ギターのケースを開けてみると、中には翔太が自分で書いた楽譜が入っていた。

剛志はそれを見て、翔太の多才さに改めて感心した。



剛志はベッドの横に置かれたデスクの引き出しを開け、中を覗き込んだ。

そこには翔太が日常的に使っていたものが詰まっていたが、その中に一冊の小さなノートが見つかった。

ノートの表紙には「日記」と書かれており、剛志は興味を引かれた。


剛志は静かにそのページをめくり始めた。


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1月5日

今日から新しい授業が始まった。

教授が提示した課題が難しそうだけど、やりがいがありそうだ。

亮太と悠馬も同じ授業を取っているので、一緒に頑張ろうと思う。

これができたら、自分たちのスキルもさらに上がるはずだ。


1月20日

亮太と悠馬とカフェで課題に取り組んだ。

二人とも途中で行き詰まっていたけど、なんとか助けられて良かった。

彼らの頑張りを見ていると、自分ももっと頑張らなきゃと思う。

友達と一緒に勉強するのは楽しいけど、やっぱり自分の課題も早く片付けなきゃ。


2月3日

最近、美咲のことが気になる。

彼女は本当に優しくて、おとなしい性格だけど、何か悩みを抱えているように見える。

どうやら家族のことで何か問題があるらしいけど、詳しく話してくれない。

彼女を助けたいけど、どうすればいいかわからない。


2月14日

今日はバレンタインデー。

美咲と一緒に過ごした。

彼女が手作りのチョコレートをくれて、本当に嬉しかった。

でも、彼女が何か悩んでいるように見えたので、心から楽しむことができなかった。

彼女の悩みを解決するために何かできることがあればいいのに。


3月1日

最近、奇妙な夢を見るようになった。

夢の中で、二匹の蛇が絡み合っているシンボルが現れる。

その夢は何度も繰り返され、だんだん鮮明になっていく。

目覚めるといつも気分が悪く、何か不吉な予感がする。

この夢には何か意味があるのだろうか。


3月10日

美咲と話をした。

彼女は最近、ますます不安そうに見える。

何か重大な問題があるに違いない。

でも、彼女が話してくれるまで待つしかない。

彼女のことを信じて、支えていきたい。


3月15日

夢がますます鮮明になってきた。

二匹の蛇のシンボルが現れるたびに、不安な気持ちが強くなる。

目が覚めると、現実の中でもそのシンボルが頭から離れない。

この夢が何を意味しているのか、誰かに相談した方がいいのかもしれない。


3月20日

美咲が何かに怯えているように見える。

彼女が何か大きな問題を抱えているのは間違いない。

でも、彼女が話してくれるまで待つしかない。

今日は彼女に少しでも安心してもらえるように、一緒に夕食を作った。

彼女が少しでも笑顔になってくれるといいな。


3月21日

美咲からショッキングな話を聞いた。

彼女を受け止めることができなかった。

彼女はどう思ったのだろうか。

これから一体どうすればいいのだろうか。


3月24日

夢がさらに鮮明になり、不安が募るばかりだ。

明日、兄さんに相談しようと思う。

美咲のことも含めて、彼に話を聞いてもらいたい。

兄なら、きっと何かアドバイスをくれるはずだ。

約束の土曜日までに気持ちを整理しておこう。

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日記を読み終えた剛志は、翔太が抱えていた不安や悩み、美咲との関係について深く理解することができた。

翔太が見ていた夢のシンボル、そして彼が相談しようとしていたこと。

そのすべてが剛志の心に重くのしかかった。


特に3月21日の日記が気になった。

3月21日は翔太が電話をよこした日だ。

美咲に何か聞かされて電話をしてきたのだ。


剛志は日記をそっと閉じ、翔太の机の上に戻した。

「翔太、俺が必ず真実を見つけ出すからな」と心の中で誓いながら、部屋を後にした。

彼は翔太の死の真相を突き止めるため、さらなる決意を固めた。

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