第50話 憤慨

「なぁ、死神。」


「何?ニンゲン。」


「もっとでっかくポイント上げようぜ。」


「だから!私はずっとそー言ってたじゃん?ならする?遂に?人、殺しちゃう?」


「殺しはキープだ。捕まったら意味がない。幸せに暮らせない。」


「え、幸せに暮らせると思ってるの?」


「は?」


「死神に取り憑かれた以上、幸せにはなれないよ?不幸せ、バットエンドだよ?」


「それはお前の意見だろ?だから別にいい。俺の人生だ。俺が決める。」


「ふ~ん。精々足掻いてみて?」


ニコニコ笑う死神は無邪気だ。まるで幼い子供のよう。


「この学校にはさ。」


「何?いきなり?」


「ヤンキーがいるんだよ。時代遅れの。」


「へ~。それで?」


「そいつらと喧嘩して俺がヤンキーの頂点に立てばポイントも高くなるんじゃねーか?」


「でも元々ヤンキーは悪でしょ?そこを壊しても悪行とは言えないよ?」


「う~ん。悪行ってのもムズいな。」


「奥が深いでしょ?全員に迷惑をかける、そして悪ではない正義の方がパニックを起こす。それが悪行。ヤンキー殴ってもポイントにはならない。だから言ってるじゃん?人を殺せ、って。」


「だから無理だって………うん?」


「どうしたの?ニンゲン?」


「アレ。アレ見ろ。」


「あ、アレ。」


「親父だ。」


校門に親父が立っていた。手には鈍器を持って。

屋上まで聞こえる。それくらいデカイ声で親父は叫んだ。


「カオル~~~~~~!!!!!あのクソ餓鬼がぁ!何処にいるんだ!ぶち殺してやる!俺の、俺の、俺の、金を返せ!!」


鈍器を振り回しながら校舎に入ってくる親父。


「バレたか。」


「バレたね。」


「どうするか。」


「どうするの?」


「まぁ、親父と遭遇してから考えるか。じゃないと対応も出来ないし、それに俺にだって親父に言いたいことがある。」


「うん?」


「最後に、一言、言いたいことがな。」

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