第12話 父を殺せば

「おせーぞ!何処行ってた!?」


「コンビニだって。雪で歩きにくかったんだよ。」


「あ、そうか。じゃあ飯。飯つくれ。」


「あ、うん。」


親父のいる居間には酒が散らばっていた。昼から酒を飲んでいたのか。


「何見てんだ?」


「見てないよ。」


「見てないでさっさと作れ!木偶の坊が!」


缶が体に当たる。酒が少し入っていたのか服に酒がつく。


時刻は13時。何を作ろうか悩んでカレーにした。夜も量を多くすれば食べれるし父も勝手に食べてくれるだろう。


ニンジン、タマネギなどを切っているなかでキッチンに父がくる。


「昼は?」


「カレーにした。」


「何分くらいかかる?」


「20分はかかるかな。」


チッ、と明らかな舌打ちをした。そして、


ドスン。


何の前触れもなく俺の背中を蹴り飛ばした。包丁が宙を舞いギリギリ目の前で刺さる。


「おせぇよ。クソ不味いくせに遅い料理なんて食えるか!出てくる。居酒屋でも行く!勝手にお前は食っとけ。」


そう言うと金を握りしめ父は玄関から出ていった。

散らばった野菜と刺さった包丁を見ながら俺は思う。


「アイツが死ねばリンは生き返る。アイツが死ねばリンは生き返る。アイツが死ねばリンは生き返る。アイツが死ねばリンは生き返る。アイツが死ねばリンは生き返る。アイツが死ねばリンは生き返る。アイツが死ねばリンは生き返る。アイツが死ねばリンは生き返る。アイツが死ねばリンは生き返る。アイツが死ねばリンは生き返るっ!!」


床に刺さった包丁を抜いてまた違うところに突き刺しながら呪文のように唱える。

だけどそれは出来ない。リンとの穏やかな生活のため人を殺すことだけは出来ないのだ。

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