第8話 幸せだった日の遺物

寒さ増す深夜の散歩。それも終わりに近づいた。というより家についたのだ。時計を見ると深夜3時。眠さはない。そろりそろりと廊下を歩いたが父が起きる様子はない。アホ面でまだ寝ている。

それに安心した俺は自分の部屋へと目指し、ベッドに横になる。外を見ると雪がさっきよりより降っていた。

明日は学校ないかもな。なんて思いながらベッドでスマホをつけた、その時、あの言葉が脳内に響く。


「勉強机の引き出しの………中………」


あの少女はそう言った。俺の家に何故勉強机があるのか何故知っているのか分からないが彼女はそう言った。

そこに大切なモノを入れておくと言っていた。


「………」


無言のまま立ち上がり部屋の灯りをつける。一気に明るくなった部屋に目がチカチカする。


「ここに………何を?」


実際問題何にも信じていなかった。アイツが死神であることを。だから勉強机の引き出しを開けても何にもない、ってオチを想像していた。何にもないのかよ、ってオチを想像していた………なのに………何故か手が震える………何が怖いのか分からない………だが……震える………

1度深呼吸して心を落ち着かせる。

どうせ何もない。ただのデマだ。そう思いながら思いながら思いながら。

ガッ。

引き出しを開ける。

ぐちゃぐちゃに入れられたプリント、折れた鉛筆、等様々なガラクタがあるなか………

1つ見に覚えのないものがあった………


「これ……………これって……………」


髪を結ぶゴムならいくらでもある。だから特定するなんて難しい。難しいはず………なのに…………


「リン…………リン…………」


その髪の毛を結ぶゴムには確かに英語でリンと書かれていた。幸せだったあの時母がリンに作ったあのゴム。事故で死んだあの時も着けていてぐちゃぐちゃになったはずのゴムが引き出しの中に………あった。

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