第6話 噂の死神
掃除をこなすと時刻は日を跨ぎそうだった。いつもなら明日に備えて寝る頃だが、今日は居眠りのし過ぎかちっとも眠くなかった。だから、夜更かしをしようと思った。
玄関で靴を履きこっそり外に出る。
散歩だ。
家から出て30分くらいたったころ、俺は線路の中にいた。
夜中なので誰も来ないし電車も通らない。
悪いことしている、そんな気持ちがさっきまでの憂鬱さを少しやわらげてくれた。
この辺は街灯がほとんどない。けれど月が灯りとなってくれるのでそんな暗さはなかった。
確か初めて流れ星を見たのも今日みたいな明るさだった。リンと一緒に家の庭で星を観測していた。俺は2度ほど流れ星を見ることが出来たが、うつらうつらしていたリンは何度も見逃し結局見れずそのまま眠ってしまった。翌朝泣くというより丸く顔をさせ不満をみせたリンに対して、また次があるから大丈夫。と俺は言ったが、リンに次が来ることはなかった。
人は死んだら星になると言うが星になれば流れ星くらい簡単に見れるのだろうか。だったらいいな、と俺は思った。
1時間くらいが経ち線路の最後まで来たみたいだ。月のせいでまだ明るく感じるがもう夜遅いだろう。
「寒いし帰るか…」
手袋無しで来たからか手は真っ赤になっていた。
線路から上に上がり帰路につこうとすると、後ろから何か気配を感じた。
振り向いても誰もいない。
「気のせいか……」
そう思ったその時。
ニンゲン。
耳元で確実にそう聞こえた。確実にそう言っていた。
「へ?へ?」
見回しても誰もいない。
冬なのに汗が出てくる。そして、
俺は走り出した。全力で、全力で走り出した。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
暑い。身体が暑い。それくらい全力で走った。何だったんだ?お化け?妖怪?それとも………
「死神………」
あの噂の死神………
「な、訳ないか。聞き間違えだよ。聞き間違え。」
「ニンゲン。ワレヲシッテイルノカ?」
「え?」
これはもう幻聴ではない。ハッキリ聞こえた。
「お、お前は誰だよ!す、姿を見せろよ!」
「フフ」
笑い声と共に風が巻き起こり………そして
「やぁ。こんにちは。ニンゲン。」
顔立ちのいい少女が現れた。
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