第2話 触ればトゲが出る

白波高校(しらなみこうこう)は駅からほど近いところにある。ここらへんの学生はよほどの馬鹿か優等生でない限りこの高校に通う。

たまにタヌキ、キツネ、テンなんかが運動場に迷い込むけれど、校舎が古臭いだけで、普通の高校だ。

昇降口で靴を履き替え、2-Bの教室を目指す。タイミング良く今はちょうど休み時間だから、廊下でだべっている生徒がちらほら見られた。階段を上がり廊下を少し進んだところで、おや、と思った。2-Bの教室の前に人だかりができていた。誰か窓ガラスでも割ったのかな、と思ったがマジだとは思わなかった。ま~たアイツだよ。ま~たアイツがやってるよ。

俺は生徒をかき分けて教室に入る。ガヤガヤとうるさい中で自分の席につく。一番後ろの席の一番目立たない席。誰も気にしない空気になれる席。そこで顔を机につけて寝る。これが俺の毎日のルーティンだった。



昼休みになりずっと寝ていた俺の隣に誰かの気配がした。


「ねぇ。ねぇ………起きてる?」


「起きてる。起きてる。何だよ。」


長く綺麗な絹のような黒髪に整った顔。


「ご飯………一緒に食べない?」


彼女の名前はサキ。俺の幼なじみである。


「食欲ない。」


「そんなこと言って………また朝も食べてきてないんでしょ?」


「関係ないだろ。」


「心配してるんだよ。だから………一緒に……」




「サキちゃん!一緒に食堂行こう!」


廊下から彼女の友達らしい人物の声が聞こえる。


「あ、嫌………その………」


「呼ばれてんぞ。」


「え、ご飯は?」


「何か売店で買ってくる。お前は呼ばれてんだから早く食堂行ってこいよ。」


「ちょ、待って………」


サキの制止も聞かず俺は売店へと向かう。

別に食べたくなかったが残り物の焼きそばパンを買って食べる。

150円の無駄遣いだ。

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