悪行するのは君がため
まんぷく犬
第1話 全てを叶えてくれる死神
冬は嫌いだ。11月に入ったばっかりなのに凍てつくような寒さの中。
はぁ~、っと息を吐くと白い空気の塊が宙に浮く。
コートでも着てくれば良かったか、と俺は思ったがまぁいいか、とすぐに思い直った。
風邪をひいても誰も気にしないんだから。
駅のアナウンスで 雪による氷の影響で電車が遅延すると言われる。
遅延証明書もらわねーと。まぁ、俺が居ても居なくてもクラスに支障はないし別にいいんだけど。
ふと電車の来ない路線を見て、ここに落ちれば死ねるかな、と思う。だが電車での自殺は金が大量にかかると聞いたことがある。死ぬ時まで迷惑かけたら………生きてるだけでも迷惑なのに。
何て考えながら遅延する電車を待っていた。
そんな時ふと隣にいる女子高生2人が喋っていた。
「ねーねー死神って信じる?」
「死神?死神ってアレ?あの人の命を取るっていう?」
「う~ん。普通はそうなんだけど私が聞いたのはそうじゃないんだよ。」
「どんなの?」
「実は………その死神、願いを叶えてくれるらしいんだよ。」
「願いを叶えてくれる?」
「そう。お金持ちになりたいとか好きな人と一緒になりたいとか色んな願いを叶えてくれるらしいんだよ。」
「え~。死神なのに?なんか普通にいい神様じゃん。」
「でしょ?けどね、願いを叶えてくれる代わりに自分が悪いことをしなきゃいけないんだって?」
「悪いことを?」
「う~ん。詳しくはよく分からないけど悪いことをしなきゃいけないらしいんだよ。」
「悪いことって?犯罪とか?」
「そこまで分からないよぉ~。だって噂だし。」
「何それ。噂にしても情報薄いね。」
死神が願いを叶えてくれる、か。
胡散臭いけどまぁ噂話だしそれくらい不透明なくらいが当たり前か。
噂の情報源だった女子高生2人はもう噂話をやめ嫌いな先生の話をしていた。
「何でも願いを叶えてくれる死神ねぇ……」
ポツリと言葉を吐きながら俺は電車を待つ。
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