お買い物、そして.....
叢雲さんを連れて再びショッピングセンターに入った。
「何を買うんですか。」
「彗ちゃんの水着ー。」
「わ、私の?というか彗ちゃん?」
「いいでしょ。行こー。」
困惑している叢雲さんもとい彗ちゃんを水着売り場まで連れて行く。
「彗ちゃんには何が似合うかなー。」
「ちょ、ちょっと待ってください。私の水着って何ですか。それに彗ちゃんって。」
「だって私と彗ちゃんはお友達でしょ。なら名前呼びで良いじゃん。それともいや?」
「いや、ではないですけど。」
「ならいいじゃん。私のことなっちゃんって呼んでもいいんだよ?」
「那月さんで。」
「もう..... で彗ちゃんの水着はどういうのがいい?」
「私はなんでも....ってそうじゃなくて!」
「おお、ナイスノリツッコミ。」
「そんなんじゃないです......」
彗ちゃんはその場に座り込んでしまった。いじりすぎたか。
「さっき夏休みの用事ないって言ってたからさ、とりあえず今度の海に行ってみない?」
「それは甘王さんと遊ぶ時ですか?」
「そう。最近お昼も一緒に食べたじゃん。」
「あれはゆ、那月さんが強引に.....」
テストが始まる前に一度だけ彗ちゃんを引っ張って来た。彗ちゃんは一言も喋らないし、纏も纏で気を使っちゃって空気は最悪になったっけ。私だけがけらけら笑ってたな。
「大丈夫だって。纏も良いって言ってくれるだろうし。」
「.......わかりました。甘王さんが言いと言ってくださったなら考えます。」
「やった。じゃあ水着見よー。」
結局買うとなったら彗ちゃんの目は真剣になっていろいろ見比べながら選び出した。たまにどっちが似合うか聞いてきて私の選んだほうは棚に戻したりしてきた。結局私と同じように大き目のライフガードを買ってボトムスもライフガードにしていた。肌を見せたくないようだ。
「ほんとにそれでいいの?」
「はい。肌焼きたくないので。」
今日も上下ともに完全ガードな恰好だし肌を焼きたくない執念はすさまじいな。
お会計をしてから感度は本当に帰るために電車に乗った。なんとか座ることができてほっとしていると私の肩に重いものがのっかった。横を見ると彗ちゃんの頭があった。彗ちゃんはすーすーと寝息を立てて寝ている。さっきまで眠たそうなそぶりはなかったけど眠かったのだろうか。そういえば彗ちゃんは布団で寝ていて少なからず私よりは睡眠の質は悪いだろう。大抵私より後に寝ているようだし。ちょっと親に相談しておくか。
幸い降りる駅で彗ちゃんは目を覚ましてくれたので彗ちゃんを背負って降りるなんてことはなかった。
「ごめんなさい寝ちゃって。」
「ううん。大丈夫。それよりも最近よく寝れてる?」
「はい。大丈夫ですよ。」
彗ちゃんは事もなげに言った。今日買ったものはそこまで多くはないけど夏本番になった太陽は私たちを容赦なく照らしてくるので急いで家に帰った。
家に帰って彗ちゃんがシャワーを浴びている間に纏に連絡を入れておく。いまは多分部活中だから後で連絡が来るだろう。親にも少しメッセージを送るとすぐに返信が来た。
「シャワーいただきました。」
「はーい。」
親とのやり取りもちょうどおわったのでスマホを充電器につないでおく。私もシャワー浴びようかな。そう思って立ち上がったタイミングでスマホの電話の呼び出し音が鳴った。でも私の着信音ではない。彗ちゃんのスマホかな。
私の横に風が吹き抜けた。いや私の横を彗ちゃんが駆け抜けていった。
「彗ちゃん!?」
彗ちゃんはテーブルに置かれていたスマホを手に取るとそのまま私の部屋に走って行った。かろうじて叢雲と発信者名が見えたけど名前までは確認することができなかった。もしかして彗ちゃんの親かな?彗ちゃんの慌てた様子が不安でシャワーも浴びる気にもなれなかったのでリビングで待つことにした。
がいつまでたっても彗ちゃんがリビングに帰ってくる様子はなく壁に掛けられた時計の針音だけがチク、タクと無機質に響いている。その音が私の心を揺さぶって、十分くらい待っても帰ってこなかったので様子を見に行くことにした。
私の部屋のドアを開けるとエアコンはついていなくて蒸し暑い温風が出てきた。部屋に入ると床の上で彗ちゃんが倒れていた。すぐそばにスマホが転がっていた。
「彗ちゃん?」
急いで駆け寄って肩を揺すると彗ちゃんはうめき声をあげた。
「持ち上げるよ。」
彗ちゃんを持ち上げてリビングのソファーに寝かせた。冷蔵庫から予備として買ってあった経口補水液を取り出して彗ちゃんに飲ませる。コップ一杯の半分くらい飲み干した後彗ちゃんは眠ってしまった。呼吸は荒くて辛そうだがとりあえず大丈夫そうだ。
しばらくした後彗ちゃんの呼吸は一定になり顔色も戻って来た。そろそろ日が暮れてきたので夕飯の準備でもしようと立ち上がったときにふと気になって私の部屋に入った。やはり床に落ちている彗ちゃんのスマホは通話中のままだった。
「もしもし。聞こえてますか?」
「どなたですか?」
スマホからは大人びた女性の声がした。
「私は彗さんを預からせてもらっている者ですが。」
「弓弦葉様でお間違いないでしょうか。」
「はい。」
「突然で申し訳ないのですが近日中にすこしお時間を頂けますか?」
「はい?」
いきなりの提案で彗ちゃんが危険な状態だというのに心配する様子の無い電話先の人にイライラしてしまう。
「とりあえず私から折り返すので。連絡先だけ教えていただけますか?」
その女性から電話番号だけ聞いて電話を切ってしまった。
すこしイライラして音を立てながら歩いてリビングに戻ると彗ちゃんが体を起こしていた。
「彗ちゃん!大丈夫なの?」
「那月さん......」
彗ちゃんは振り返って私の名前を呼んだかと思うと再び横になってしまった。
「大丈夫?飲み物いる?」
「うん。欲しいかも。」
コップにお水を入れて持って行くと彗ちゃんはごくごくと勢いよく飲み干した。彗ちゃんをよく見ると汗で服が肌に張り付いてしまっている。
「彗ちゃん、着替えれる?」
「うん。」
部屋から適当に彗ちゃんの服を持ってきて着替えさせる。彗ちゃんは服を手に取ったままぼーっとしていたので私が脱がして着替えさせることにした。
汗をタオルで拭きながらなんとか彗ちゃんを着替えさせた後再び彗ちゃんを腕で抱えて私の部屋まで運んだ。
さっき部屋に入ったときに冷房をフルパワーでかけてきたので部屋はひんやりしている。私は彗ちゃんをベッドに降ろして部屋の電気を消した。
「あとでペットボトルとか持ってくるから。何かあったらスマホでもなんでも呼んでね。」
「.....ごめんなさい。」
「大丈夫だから。お休み。」
しばらくその場にいると彗ちゃんは眠ったようなので私はそっと部屋を出て充電器につないで置いたスマホを手に取った。さっきメモしておいた電話番号に電話をかける。電話の呼び出し音が四回ほどなった後、「もしもし?」とさっきの女性の声がした。
孤高な超絶美少女が居候にやってきました。 緩音 @yurune
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