テスト返却、そして夏休み。
あれから時間が経ち、今日はテスト返しの日だ。今日が終わったら待ちに待った夏休みが始まる。高校では部活に入ってないから自由な時間が結構ある。
「じゃあ次は弓弦葉さん。」
「はい。」
先生に呼ばれて教室の前に行く。この学校は一度に全教科の回答用紙とそれぞれの学年順位と総合の学年順位の書かれた紙を渡される。
「さ、せーので見ようか。」
「うん。」
先に受け取っていた纏は早く見たくてたまらないようだ。
「どうする?一教科ずつ見てく?」
「あり。それにしよう。」
「じゃあ数学からでいい?」
「私に数学で挑もうなど百年早いよ、纏。」
せーので数学の回答用紙をひっくり返す。纏は97点で私は100点だった。
「数学は負けないよー。」
「文系科目でひっくり返す。」
そのあと国語、現社、理科基礎で勝負をしたが纏いが国語と現社を勝って、理科基礎は同点だった。
「ラストは英語かぁ。自信ないなぁ。」
英訳問題に手こずったから長文問題ほとんど読んでないんだよね。
「じゃあ行くよ。せーの。」
まずは私の点数から見た。やっぱり長文問題のところにはミスがあったが、それ以外は取れていた。纏のは.....
「満点かよー。」
「ははは!英語は大得意だからね。」
「元アメリカ住みめ.....」
結局私の1勝1分け3敗で負けてしまった。合計点でもしっかり負けている。現社でぼこぼこに負けたせいだ。
「負けたー。絶対現社のせいじゃん。」
「負けは負けだよ。さてどんなお願いを聞いてもらおうかな。」
私と纏のテストは負けた方は勝った方のお願いを聞くという罰ゲームをするのが恒例になっている。纏は手を顎に当てて考えるポーズをした後、不意に手をパンと鳴らした。
「海。」
「え?」
「海に行きたい!」
「いいけど部活は?」
「部活の日程送るから空いてる日教えて。」
「了解。」
その日の夜に纏から日程が送られてきて、海に行く日程が決まった。夏休みに入ってちょうど一週間後だ。一応平日だからこみ過ぎているということも....いや纏のことだから関係ないか。
一応水着を着てみることにした。最後に来たのが去年のことなのでサイズが合わないかもしれない。そう思ってクローゼットのタンスから水着を取り出して着てみた。ちょっときついから新しいのを買おうかな。そう思って水着を脱ごうとしたタイミングで部屋のドアが開いた。
「シャワー先にいただきm.....ごめんなさい!」
シャワーを浴びてきたであろう叢雲さんはドアを開けて私を見るなりバタン!と大きな音を立ててドアを閉めてしまった。
「えぇ.......」
「なるほど、海に行くから水着のサイズを確かめてたのですね。」
「そう。一言声をかけておけばよかったね。」
「いえ、ノックもせずに開けてしまった私が悪いです。罰はなんでも受けます.....」
「罰なんてそんな.....そうだ!水着選び手伝ってくれない?」
「水着選びですか。」
「そう!服のセンスいいし手伝ってくれたら嬉しい。」
「わかりました。用事はないのでいつでも大丈夫です。」
「え、じゃあ明日でもいい?」
「わかりました。準備しておきます。」
「よろしく~。」
最近来た気がするショッピングモールへ再びやって来た。
「じゃあ水着選びよろしくねー。」
「弓弦葉さんは好きな色とかありますか?」
「うーん。好きな色かぁ。黄色とか?」
「黄色系ですね。わかりました。」
そう言ってショッピングモールの中に入ろうとする叢雲さんの手を引き留めた。
「どうかしましたか?」
「あ、いや。」
ぱっと手を離してショッピングモールの中に入る。
「こっちはどうですか。いや、こっちか。」
水着売り場についた私たちは水着を見て回っていく。ワンピース系のかわいいものからビキニや隠す気があるのかもわからない布面積の小さい水着まで並んでいる。
「これとかどうかな。」
私が手に取ったのは肌面積のほぼない眺めのパンツと長袖のラッシュガードだった。これなら日焼け止めも簡単だ。
「却下です。」
叢雲さんは私からラッシュガードを奪って元の場所に戻した。
「えー。」
「肌を見せたくないのはわかりますが例えば.....」
叢雲さんが手に取ったのはビキニで上下別れているタイプの水着だった。胸元は肩と平行になっているのでしっかり隠れている。でも丈は短かく見えた。
「これだとお腹見えちゃわない?」
「多分見えると思います。昨日見た感じですけどスタイルよさそうだったので.....」
「とりあえず着てみるよ。」
「お願いします。」
試着室で着て叢雲さんに見せる。
「お似合いですよ。」
「そうかなぁ。」
前の水着よりも肌面積が小さくて少し恥ずかしい。でも白い水着に黄色い柄が入っていてかわいいのは確かだ。
「まだ他のも見てみますか?」
「うん。そうしよ。」
とりあえず買い物かごにキープしながら他の水着を見る。少しオーバーサイズぎみなラッシュガードでボトムスごと隠すものがあってそれがかわいかったので買うことにした。
「それだとさっきの奴は合わないと思うんですけどいいですか?」
「どうせだし二着買おうかなって。」
「そうですか。ならもう一つ選びましょう。」
結局キープしておいたビキニの上下と大き目のラッシュガードと短めのボトムスを購入した。
帰る前に買い物に付き合ってくれた叢雲さんを労うためにパンケーキ屋さんに寄ることにした。この前完成したばっかりの店舗で内装はレトロ風で落ち着いた雰囲気のお店だった。
「今日付き合ってくれたお礼。さ、入ろ。」
「えっえっ。」
予約しておいたのでスムーズに中に案内された。個室で外はカーテンで仕切られている。
「わざわざありがとうございます。」
「夏休み初日についてきてもらって申し訳ないから。」
「どうせこの夏休みはすることが無いのでいいのですけどね。」
「そっか。とりあえず注文しよ。ここパフェが美味しいんだっけ。」
「はい、最近テレビでやってましたよね。」
順番待ちが長蛇の列を作っていたのはそのせいか。予約しておいてよかった。注文はテーブルに置かれているタブレットでパフェを二つ頼んだ。
「うわわわわ。」
頼んだパフェが来て叢雲さんはかわいらしく驚いている。写真で見たのよりもボリュームがあるように見える。イチゴのパフェで器の中から上のトッピングまで苺で埋め尽くされている。持ち上げただけでバランスを崩しそうだ。
「写真撮ろ。ハイチーズ。」
叢雲さんにスマホを向けてシャッターを押す。叢雲さんはちょうどパフェを口に入れたところだった。
「ん゛ん゛、弓弦葉さん!」
叢雲さんはお怒りのようだ。不満げな表情で口をムッとさせている。かわいい。
「ごめんごめん。」
「消しといてくださいね。」
「はーい。」
あとで鍵付きのフォルダに移動させとこ。
「美味しかったー。」
多少時間はかかったが食べきることができた。お腹はパンパンになっちゃったけど。
「美味しかったです。連れてきてくれてありがとうございます。」
「喜んでくれてよかった。じゃ、買い物の続き行こうか。」
「え、もう終わったんじゃ......」
「行くよー。」
困惑している叢雲さんの肩を押してショッピングセンターに再び向かった。
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