居候さんとデート(お出かけ)

「準備できた?」

「はい。」

「じゃあ行こー。」

 朝ご飯を食べてからショッピングセンターに向かう。移動手段は電車とバスだ。早く免許取れる年齢になりたいなぁ。

 30分くらいでショッピングモールに着いた。スマホのメモアプリを起動する。ここに今日買いたいものが書いてある。このショッピングセンターには翌日に自宅まで届けてくれるサービスがあるのでもし持ち帰れなかったらそれを使う予定だ。

「じゃあ何から見に行こうか。何か欲しいものとかある?」

「食器類から行きましょうか。」

「了解。」

食器ショップにはいろんな柄のお皿やお箸が並んでいた。叢雲さんはじっくりと眺めたり手にとたっりして決めた。叢雲さんは全部一種類ずつしか買っていなかったので食器は同じものをもう一セット追加してレジに並んだ。

「自分で買いますよ。」

叢雲さんは財布からカードを取り出した。

「あー。大丈夫。親からお金貰ってるし。それに今使ってるのも実家から持ってきたやつだから。」

「それでもせめて自分の分くらいは出します。」

「そ?まぁここは一括で払っちゃうから。」

「え。」

叢雲さんが支払う前に私のカードで支払う。お母さんからいつもより多くの金額が入っていたのはこういうことに使えということだろう。

「半年しかいないのに......」

「まぁそのあとにお客さんが来るかもだしね。それに私が同じ食器じゃないと気持ち悪いから。」

柄の違うお皿に同じ料理を乗せるなんて私には耐えられない。


 そのあとマグカップを見たり、叢雲さん用の枕を見たりしているとお昼ご飯の時間になった。

「そろそろご飯食べよう。お腹空いた。」

「そうですね。何を食べますか?」

「決まらないからフードコート行こうか。」

フードコートに移動してきた。休日のお昼時ということで混んではいたが何とか空席を見つけて座った。

「待ってるから先に頼んできていいよ。」

「わかりました。」

叢雲さんの後姿を見ながらスマホをポケットから取り出してニュースを見て時間を潰した。

 そのあと叢雲さんが戻って来てから私はたこ焼き屋さんに向かった。さっき一目見てからしたがたこ焼きの気分になってしまった。


「お待たせ。」

叢雲さんは私が来るまで食べるのを待ってくれていたので急いで戻って椅子に座る。

「いただきます。」

割り箸を割ってたこ焼きを掴んで食べる。熱いけど美味しい。

 ふと叢雲さんの方に視線を向けると叢雲さんは私の方をじっと見ていた。たこ焼き食べたいのかな。

「はい。」

一つお箸で掴んで叢雲さんの口の前に持って行く。叢雲さんは躊躇せずにそれを咥え.....目をカッと見開いて慌てて目の前に置かれた水を飲み干した。

「熱かった?」

「はぁ...はぁ....やけどするかと思いました.....」

「こっち見てたから欲しいのかなって思ったけど違う?」

「違います。ただぼーっとしてただけで。」

「そっか。叢雲さんも早く食べないと麺のびちゃうよ。」

「はい。いただきます。」

叢雲さんは髪を後ろでまとめてから、綺麗に割り箸を割ってお蕎麦に手を付けた。


「「ごちそうさま。」」

食べ終わった後すぐには動けないのでトレーとごみを片付けてからもう一度席に戻った。

「美味しかった。たこ焼き機買おうかな。」

「確かに美味しかったですよね。熱かったですけど。」

「少し怒ってる?」

「いえ。呆けていた私が悪いのです。」

舌をやけどしてしまったのかずっと水の入ったコップを傾けている。

「そうだ、叢雲さん。連絡先教えてもらってもいい?電話番号でもSNSでもつながればなんでもいいんだけど。」

「私がやってるのはこれしかないのですが。」

叢雲さんが起動したアプリは日本で一番使っている人の多いメッセージアプリだ。これなら私もやっている。

「じゃあちょっと借りるね。」

「はい。」

二つの画面を操作して友達登録をする。一度適当なスタンプを押して確認をした。

「ありがと。これで何かあったら電話するし、電話してきてくれてもいいから。」

「はい。ありがとうございます。」

「じゃあ、そろそろ行こうか。あと必要なものは...」

メモアプリを開いてもう買ったものはチェックを入れていく。残ったものはお弁当箱くらいか。

「お弁当箱だから雑貨屋さん見に行こうか。」


 雑貨屋さんにやって来た。ここはいろんなものが置いてあってわくわくする。でも今日はお弁当箱だ。

「そういえば叢雲さんってどれくらい食べれるの?いつも私より少し少ないくらいの量にしてるけど。」

「ちょうどいいくらいです。」

「ならよかったよ。じゃあ気に入ったのがあれば言ってね。」

「また買ってくれる気ですか。」

「うん。」

「一応私たちクラスメイトですよね。」

「一応もなにもそうだね。」

「なら買ってもらってばかりなのはおかしくないですか?」

「クラスメイトだけど叢雲さんはうちに居候してるから。だから私の家のルールに従うのは当たり前じゃない?」

「どんなルールですか......」

結局お弁当箱は私がかうことができた。木目調の落ち着いた感じのお弁当箱だ。

「で、一応買い物は終わったわけなんだけど気になるものとかあった?」

「いえ....そういえば布団はどうするのですか?」

「実家から送ってくれてるらしいから今日の夕方か明日には届くってさ。」

「そうですか...なら私はもう大丈夫です。」

「そっか。じゃあ服買うの手伝ってくれない?」

「え?」


服屋さんがたくさんあるエリアまでやって来た。

「助かるよ。私服選ぶセンスないからさ。」

「でも......」

「ちなみにこの服は纏....私の友達が選んでくれた奴。まぁとりあえず私に合いそうな服があったら言って。」

「わかりました。」



「結弦葉さん。これとこれとこれ試着お願いします。」

「またぁ?」

「では他の服探しに行ってきますので。」

「えっちょっと。」

行っちゃった。叢雲さんが謎に張り切っているせいでさっきから試着を繰り返している。私が全く着ないへそ出しの服だったりどこから持ってきたのか地雷系っぽい服だったりを持ってきている。

「着替えれましたか?」

「うん。」

試着室のカーテンを開けると新しい服を持った叢雲さんがいた。

「ちょっと待っててください。」

新しい服を持ったままどこかへ行ってしまった。

 すぐに戻って来た叢雲さんの手には服はなく、帽子だけが握られていた。

「これ被ってみてください。」

もう着せ替え人形の気分の私は抵抗もせずに被る。

「どうですか。私はいいと思いますが。」

振り返って鏡を見ると私は青っぽいワンピースに身を包まれていた。胸元にリボンがあってそこもワンポイントでかわいらしい。帽子もリボンのついた麦わら帽子だ。もとが私だということを除けばいいセンスだ。

「かわいい!ありがとう。叢雲さん。」

「.....どういたしまして。」

「じゃあ買ってくるから。」


元の服に着替えなおして会計をして店を出た。いい買い物ができたな。今度纏に見せて驚かせてやろう。時計を見るともう3時を過ぎていた。そろそろ帰らないといけないな。

「そろそろ帰ろう。」

「.......はい。」

「どうしたの?」

「テンションが上がってしまって申し訳なかったなと。」

「いいよ。それよりも叢雲さんは笑ってた方が可愛いよ。」

「そ、そうですか。」

「そうだよー。」


ショッピングモールから出ると暑さが一気に押し寄せてきた。歩いて駅まで向かうのも一苦労だ。ふと隣を見ると叢雲さんがいない。後ろを振り拭くと立ち止まっていた。叢雲さんの視線の先にはクレープ屋さんがあった。

「食べたいの?」

「っいえ!大丈夫です。」

「私は食べたいんだけどなー。叢雲さんはいらないの?」

「......食べます。」


クレープを買って食べながら歩く。アイスの入ったクレープなので暑いなかでも美味しく食べられた。隣で歩く叢雲さんは溢れんばかりの笑みでやっぱり笑ってた方が可愛いなと思った。

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